ヒト心あれば魚心 意外と賢い魚たちの行動からヒトの心を考える

ヒト心あれば魚心 意外と賢い魚たちの行動からヒトの心を考える

魚の行動に心を見る

ヒトが人に心を感じる時、それは相手の行動を見て、見えない心を予想しています。では、魚ではどうでしょうか?  例えば、魚を飼っていると、餌をあげる人が近づいたら寄ってきます。その姿は、餌をくれる飼い主を覚えて、要求しているかのように見えます。逆に、水槽を網でかき回していると、次第にヒトの姿に敏感に反応して逃げるようになります。まるで、恐怖から警戒心が高くなっているようです。また、群れを作る魚を1匹にすると、孤独のストレスからか餌を食べなくなります。そして、水槽越しにほかの魚を見せると、寂しさが解消されたかのように餌を食べるようになります。このように、魚たちはヒトが人に心を感じるような振る舞いを見せるのです。魚の心理学は、こんな魚の心を知り、ヒトの心との共通性を探る研究です。

釣りの仕掛けを覚える魚

ヒトと魚をつなぐものに、魚釣りがあります。釣り人たちは魚が釣れない時、「魚が仕掛けを覚えたから釣れないんだ」と想像することでしょう。実は本当に魚は釣りの仕掛けを学習することができます。マダイは一度釣られる経験をすると、仕掛けを避けながら餌を取るように行動を変え、釣られにくくなります。そして、仕掛けを覚えた魚は仕掛けの餌や形が変わっても仕掛けを避けるようになります。つまり、危険な仕掛けというものを見定めているのです。ヒトのように、物事を捉えて危険を避けるということを魚もしているのかもしれません。

魚心を知ることは

ヒトも魚も同じ脊椎動物です。そんな魚の心を知ることは、ヒトの心の原理を知ることができるかもしれません。また、行動原理にある心がわかれば、魚たちがどう生きているのか、その生態を知ることができるでしょう。そして、食糧資源である魚の行動を予測できれば、水産学などの実学にもつながります。一見、遊びのような魚の心を探る研究ですが、様々な学問に貢献することができるのです。

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新潟大学 創生学部  准教授 高橋 宏司 先生

新潟大学 創生学部 准教授 高橋 宏司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

行動生態学、動物心理学、水産学

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メッセージ

研究の発想は日常生活の中にも溢れています。家庭や学校の中で気づいたこと、疑問に思ったこと、きっかけはなんでも構いません。しかし、多くの人は、疑問があってもすぐ忘れてしまいます。なので、浮かんだ疑問はすぐにメモをとりましょう。そして、メモを見つめて、興味があることについて考えてみましょう。人は、なぜそういう行動をするのか、どんな心理なのかという具合です。ここから仮説が生まれたら、どうしたら確かめられるのか、また考えます。すると、物事が今までとは違って見えたり、自分の関心事に気づけることでしょう。

新潟大学に関心を持ったあなたは

新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。