建築における強度と安全性について
材料の組み合わせで強度を高める
現在の住宅建築では、単一の材料というより、材料を複合して建てられるケースが増えています。例えば、鉄筋コンクリートは鉄とコンクリートの組み合わせです。コンクリートは石のような性質を持っており、潰される力には強い反面、引っ張ろうとする力には弱く、ひび割れてしまいます。一方、鉄は引っ張る力に強いですから、鉄とコンクリートを一体化することで、押しても引いても丈夫な構造が造れます。
ほかに木と鉄の組み合わせもあります。木の持つ、軽く持ち運びに優れ加工しやすい特性と、鉄の強い特性を組み合わせることで、より安全性の高い住宅を造っています。
建築物の強度計算は難しい
しかし、地震などの災害に対して、100%安心な建物を造るということは不可能です。しかも建築の場合、工業製品と違い、試作品を造って実験して市場に送り出すというプロセスを踏むことはできません。パーツごとの実験はできるケースもありますが、家全体を試作するのは一般的ではありません。通常、コンピュータでの計算に基づいて設計、建築が行われます。
また建てる場所の土壌や大工の技術によっても、強度は左右されます。ですから本当の意味での強度を解析、数値化することは非常に難しいというのが現状です。
リスクを認識した上で安全性の議論を
このように建築とは、解明しきれていない部分が多いのです。これからの建築は、建築主と建築業者が「法律が要求する安全を確保した建物は建てられるが、その基準が絶対安全とは限らない」ということを念頭に置いた上で、リスクをしっかりと共有する必要があります。その上で、どうすればそのリスクをカバーできるのか、あるいは壊れることも想定して、このように壊れるようにすれば居住者の命や大切なものを守れるかなどといったことを話し合い、安全性を高めていく、という取り組み方が必要でしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 建築学科 准教授 高木 次郎 先生
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