農山村の再生をめざす研究
今、森が荒れている
わが国では最近、荒れている森が多くなっています。なぜこうした現象が起きているのでしょうか。
まず、大前提として区別しておかなければならないことは、原生林とそうでない森林についてです。原生林は、基本的に人間の手を入れなくてもよい森林です。自然プロセスが機能するので、そのままにしておいて大丈夫なのです。一方、一度人間が利用したことのある森、つまり、木を切り出して建材や家具の材料、あるいは薪(たきぎ)などの燃料に使った森林ですが、これはきちんと手を入れないといけません。そうしないと荒れはじめるのです。それはなぜでしょうか?
木を切った後には、植林をします。植林は、ある一定の面積のところにたくさんの苗をいっせいに植えます。そうして成長していくのですが、苗にも強いものと弱いものがあり、ある程度育ってきた時に丈夫な苗を残すことによって、それぞれの木に十分な栄養がいくわけです。
わが国では戦後、拡大造林政策を進めました。ところが60年代以降から、外材がたくさん輸入されてきて、「手入れ」をしなくなってしまったのです。当然、植林された木には一定量の栄養分しかいき届かなくなり、ヒョロヒョロの木になってしまいました。そんな木がたくさんあるという事態が全国各地で起きている状況なのです。
何が問題かというと、こうした木々ばかりになると、例えば強い台風が来た場合、あるいは大雪が降った場合などに、木木が共倒れになってしまうおそれがあるのです。
農家の減少が林業の衰退を招く
この状態を放っておくと、森の崩壊につながります。どうにかしなければなりません。ところが、過疎、そして、高齢化という問題があり、手を加える人がおらず、全国的に林業が衰退しているのです。多くの地方の場合、農家が山を持っています。しかし、農村に住む人も林業従事者も減少し、林業の衰退という構図ができてしまったためです。日本の農山村でこうした崩壊現象が起こっているのです。
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