「都市計画」を、本場パリから学ぶ
フランス人は人生の楽しみ方を知る人たち
都市計画を語るときに、パリの街並みについては外せません。
パリでは多くの人が昔からの古いアパルトマンに住み、通勤・通学の所要時間も30分程度と手軽な距離で暮らしています。残業もほとんどせず、家族と過ごしたり、オペラや映画、ワインを楽しむなど、人生を心から楽しんでいます。実際にパリで生活した日本人は、「日本にはない日々の生活の豊かさに、改めて驚かされた」と口々に語ります。
しかし、これは単に彼らの国民性だけによるものではありません。パリの街並みそのものが、植栽(緑)や公園などのゆとりの空間が多く、職場や劇場、市場などが日常に近い空間に位置するなど、豊かな生活を可能とする都市計画がなされているからなのです。
「都市計画」から見る、パリの街並みの歴史
現在のパリが形成されるまでには、数百年の歴史が重ねられてきました。かつてのセーヌ川は、動物の死骸や生活排水などが垂れ流され、お世辞にも美しいとは言いかねる河川でした。
しかし、16世紀頃から時の為政者が街並みの整備や環境美化に取り組むようになると、徐々に川は本来の美しさを取り戻し、それまで橋の両脇にあった猥雑な店や民家は撤収されました。そして、川面に美しい橋のかかる風景は、人々の心をとらえるようになったのです。
高邁な理想ではなく、小さな願望から生まれた
また、貴族たちが馬車からの景色を楽しむために道路の整備が進み、その両側には木々が植えられ、緑豊かな街並みが生まれました。庶民たちも「自分たちの納める税金がこうして日々の生活を豊かにすることに活用されるのなら」と納得もできたのでしょう。
このように実際の街づくりは、どちらかというと「都市計画」や「環境緑化」といった高邁(こうまい)な理想ありきで始まったものではなく、人々の「より快適に暮らしたい」「より楽しく過ごしたい」という小さな願望から生まれたものと言えます。
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