小水力発電で「エネルギー」「技術」の地域内循環を

小水力発電で「エネルギー」「技術」の地域内循環を

発電量の小さな水力発電

小水力発電とは、農業用水路や上水道など身近にある水エネルギーから電気を産み出す小規模な発電です。ダムを用いないため、環境にもやさしいです。再生可能エネルギーの中で最もライフサイクルCO₂が少なく、エネルギー密度、発電効率の点でも優位です。一方で、発電所あたりの発電電力量が小さく、経済性の確保という課題があります。研究開発段階から高性能化だけでなく、作りやすさや構造を簡素化することによる低コスト化を意識して取り組むことがとても大切で、既存技術に囚われない大胆な発想の転換が必要です。また、小さな水車は水中のごみが内部に詰まりやすいため、除塵装置の実用化研究も進んでいます。

地域ですべてをまかなう

地元で製作した水車が地域の水エネルギーを電力に変換し、それを地域内で活用する取組みが進んでいます。設置から維持管理までを地域で完結することは、技術の涵養(かんよう)、経済循環に加え、災害時の自立電源確保の観点からも注目されています。例えばインドネシアにある無電化村に水車が導入された際には、プロペラ水車の羽根車を鈑金加工(金属板を切る、曲げる、溶接する)だけで製作できるとの制約の中で設計、試作が実施され、無事に地元で利用できる水車が実現されました。地域の人たちが、製作、設置、発電、管理ができることがとても重要なのです。

電力を地域で役立てる

小水力発電は、電力需要地付近で発電してその場で電気を使うことができます。例えば、畑の脇を流れる農業用水で発電し、鹿や猪の農地への侵入を防ぐ電気柵に供給して農作物を守り、農業収益が増加しました。
東日本大震災の際には、農業用水に設置した水車の電灯のみが停電地域で灯っており、以来自主電源や非常用電源の大切さが認識され、水力発電の設置が進められています。また、中山間地域はインフラ網が脆弱で、災害時には停電や孤立の可能性があるため、非常時には防災拠点などに小水力発電の電力を供給するシステムづくりにより、孤立から自立への変革が進められています。

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信州大学 工学部 機械システム工学科 准教授 飯尾 昭一郎 先生

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機械工学、流体工学

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メッセージ

現在、環境・エネルギー・食料・福祉・医療といったところに課題がひしめいており、その解決に向けた着実な歩みが求められています。あなたが、好きな学問分野に飛び込んでたくさんの経験を積んで、これらの課題解決に力を発揮されることを期待しています。ただし、学問だけではダメです。何事も経験です。普段の生活を無意識に過ごすのではなく、色んなことに意識をもって眺めるようにしてみてください。少しでも感じることがあれば経験値アップです。それがあなたの将来の意思決定や課題解決時に影響すると思いますよ。

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