マスクやアルコール消毒は有効? 科学的エビデンスで感染制御を
感染症研究の幅広い領域
新型コロナウイルスの流行により、世界中に大きな混乱が起きています。このように社会に大きな影響を及ぼす感染症をいかに抑えるかが、「感染制御」という分野の研究課題です。感染制御には主に、「感染を起こす微生物やウイルスの研究」「微生物やウイルスがどのような病気を起こすかの研究」「人体が感染に対してどのような反応をするかの研究」、そして、「社会の中でどのような仕組み・ルートで感染が広がるかの研究」などが含まれます。
科学的エビデンスの確立が重要
感染制御の研究では、これらのことを数多くの微生物やウイルスについてそれぞれ研究し、科学的エビデンス(根拠・裏付け)を確立していきます。例えば、新型コロナウイルスの感染防止として広く行われているアルコール消毒やうがいについては、実は科学的エビデンスは確立されていません。また、従来からインフルエンザなどの感染予防として使われていたマスクの科学的エビデンスは、最近になって確立されました。感染制御の研究結果に基づいて、薬やワクチンの製造、感染予防対策などが行われるため、本当に効果があるかどうかということを、科学的に検証していくことが重要なのです。
細かな不明点を洗い出す
感染制御は、一般社会の中だけでなく医療機関内で起こる「院内感染」も重要な研究対象です。病院で長い時間を過ごす入院患者や医療従事者の間に、病原体が広まってしまうのが院内感染です。病原体にもさまざまありますが、その一つについて、地域でどのように感染が広がっていくかを調べた最近の研究例があります。それによると、地域ごとに人間の体内にいる菌の特徴は少しずつ異なっており、全国一律で菌が広がって起こしているのではないことがわかりました。
このように、人類の長い感染症との戦いの中でも、まだまだきちんと解明されていないことがたくさんあります。感染制御の分野では、細かな不明点を洗い出して、一つひとつ解明していくという地道な研究が行われています。
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先生情報 / 大学情報
大阪医科薬科大学 薬学部 薬学科 感染制御学研究室 教授 駒野 淳 先生
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