電気を使わず空気圧で動く介助機器の開発
移乗介助におけるさまざまな課題
高齢者など、身体に不自由がある方を車椅子やベッドに移動する作業を「移乗介助」と言います。力の入らない状態の人の体を持ちあげてしっかり支える、とても力がいる作業です。施設内での移動は頻繁に行われるため、介助者の身体には大きな負担となります。電動の移乗機器もありますが、取り回しが難しく価格も高価、さらに電気で動くので、災害や停電などの緊急時は使えないため導入が進まず、結果的に介助者の体力任せとなっているのが実状です。
電気を使わず空気圧を活用した機器
そうした問題の解決策のひとつとして研究が進められているのが、空気圧を利用した移乗機器です。圧縮空気を利用した機器は、すでに工場などでの導入事例があり、対象物をつかむ、移動する、空気で吹き飛ばすといった作業に使われています。この技術を、電気を使わずに介助者の操作で移乗を安全にサポートする機器に応用できると考えられます。現在は実験段階ですが、空気圧の柔らかい動きを用いたクレーンゲームのような装置ができています。壊れやすいスナック菓子のようなものの移動からはじめ、実験を繰り返すことで最終的には人間を動かせるものになっていくでしょう。
介助者の負担と患者の不安の解消をめざす
一般的なオフィスビルなどと異なり、医療や介護の施設では医療用の空気圧配管が最初から整っていることが多くあります。この点も空気圧の機器が適している理由で、圧縮空気を送るための配管工事が不要なため導入コストを最小限に抑えられます。さらに、圧縮空気には電気で駆動するモーターと異なり、動きのショックを吸収する特徴があります。人を持ち上げて運ぶ際に生じる揺れを吸収できるので、移乗時の患者の不安の軽減も期待できるでしょう。電気や電子制御といった手法のみにとらわれず、今ある技術をフル活用して課題をどう解決していくか、そうした視点が新しいものを生み出す鍵になります。
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職業能力開発総合大学校 総合課程 機械専攻 助教 森口 肇 先生
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