次世代の植物工場研究 バイオと工学の融合
現在の植物工場は、野菜工場
全国には200以上の植物工場があり、日本は世界の最先端技術を持っています。そこで作っているものとしてすぐに想像できるのはレタスやトマトなどの野菜でしょう。ほとんどの植物工場では、野菜が作られ、安定生産できることが長所とされています。しかし、露地栽培できる野菜を工場で作るのは、やはりコスト高で、採算性の課題が残ります。ビジネスとして成立する植物工場に向けて、さまざまな研究が進められています。
高付加価値の有用成分を含む植物栽培へ
これからの植物工場では、高付加価値のもの、例えば有用成分を含む薬用植物の栽培などが考えられています。薬用植物では、薬効成分を多く含むことが重視されるので、人工環境の中で薬効成分を生合成する経路を活性化させるにはどうしたらよいかが研究されます。
温度・光・湿度・二酸化炭素濃度が調節できる「人工気象器」と呼ばれる装置の中で、さまざまな環境刺激を与え、生育や成分などの違いを計測して栽培条件を特定し、そのための装置づくりに生かすのです。
遺伝子情報からのアプローチも
環境刺激の違いによる生育や成分の増減はこれまでも測られてきましたが、そこからさらに進んだ研究も開始されています。成分の生合成と環境刺激との関係を今より細かく見る、網羅的分子情報の基礎解析「オミックス解析」です。オミックスとは生物の体の中にある分子全体を網羅的に調べる学問であり、解析・測定の対象はトランスクリプトーム(細胞内の全RNA)やメタボローム(代謝産物)などがあります。
これを基にした計測データから、環境刺激に対して生合成経路のどこが活性化されたかの直接的な原因が解明され、ターゲットとなる成分を多く含む植物を栽培する条件が明確な植物工場ができるのです。次世代の植物工場研究は、まさにバイオテクノロジーと工学が融合した研究領域といえます。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 農学部 食料環境システム学科 教授 伊藤 博通 先生
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