ルールが何のために、誰のためにあるか考える
国際法と憲法
法学は、法制度が何のためにあるかを考え、その趣旨目的を明らかにし、条文を解釈します。何のためにルールが存在するのか、常に批判的に考え続け、人間の自由を守ろうとするのが法学の営みです。
憲法と国際法は、同じ方向を向いていることもありますが、中には対立する場合もあります。両者の関係をどのように考えるべきか、理論的にも実務的にも非常に重要なテーマです。
例えば「選択的夫婦別姓」
日本では、結婚した女性の約96%が男性の名字に変えています。女性差別撤廃条約の中には、結婚した夫婦は名字についても同じ権利を持つという趣旨の定めがあり、日本の状況は性差別に当たるのではないか、という指摘があります。
もっとも、日本の民法は「夫又は妻の氏」としているだけで、男性の名字にしなければならない、とは書かれていません。それでも圧倒的多数の女性が名字を変えるのは、日本社会に存在する暗黙のプレッシャーからで、これを「間接差別」と考えるべきかどうか、議論があります。
このような場合、制度趣旨に立ち返って考えることが重要になります。婚姻制度の趣旨目的に照らし、同じ名字にする必要があるかを考えます。海外の例も参照しつつ、婚姻において同じ名字は必ずしも必要ないと考えるなら、「選択的夫婦別姓制度」を導入すべき、という議論につながっていきます。また、法哲学の分野では、そもそも婚姻制度を廃止すべき、という議論も有力です。
自由と平和:法が目指すもの
国際社会においては、国際法を実効的に執行する世界政府は存在しません。それでは、戦争が起こっても、何もできないのでしょうか。この点について考えるのも、法学の一分野です。
法は、自由や平和を目指し、少しでも世の中を良くしていくためのツールの一つといえます。少しでも世の中を良くしていきたい、という思いを持つ方にとって、リベラルアーツの中で法を考えることには、きっと意味があると思います。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。