自分が自分であることを、どう証明する?
個人を特定する
入学の手続きや、銀行口座の開設などの重要な契約を結ぶ際は、本人確認が欠かせません。しかし、あなたは自分が自分自身であることをどうやって証明できるでしょうか? 日本では、長く健康保険証や運転免許証、パスポートのような官公署が発行する写真入りの証明書が有効でしたが、未成年などで持っていない人もいます。他者とは違う自分であること、それを確認できるようにすることは、現代の大きな課題となっています。
本人確認の必要性
近代の政府には、徴兵や徴税などのために、国民一人一人を区別して認識する必要が生じます。当初は集落や町内会など、伝統的な共同体を通じて国民を把握することも行われていましたが、政府の仕事が増えていき、年金や医療など、個人を単位としたサービスを提供するようになると、一人一人を識別する必要性は増していきます。
以前の日本では、主に名前・年齢・性別・住所の4つの情報で個人を識別していました。ただ、住所を把握するのは簡単ではなく、残りの3つの情報がすべて同じだったりすると、混乱の原因になります。もし、個人しか持ち得ないDNAや指紋などの生体情報が使えれば間違いなく識別できますが、全国民の生体情報を政府が収集するのはとても難しく、嫌がる人も多いでしょう。そこで政府は、国民一人一人に割り振るマイナンバーや、マイナンバーと個人が結びついていることを示すカードを作り出して、簡便に本人確認ができるようにしています。民間の事業者も、この本人確認のための社会基盤を利用できます。
これからの政策
海外に目を向けると、多くの国では本人確認にクレジットカードや携帯電話を活用しています。韓国のように、軍事的な脅威から本人確認のカードの携帯が義務化されているところもあります。それぞれの国で、デジタル化の進展にも影響を受けながら、本人確認のためのシステムと政府の公共サービスが多様に結びついています。日本でも、海外との違いを比較政治的な観点から検討しながら、適切な方針を探る必要があります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。