マヤ遺跡から考える文化遺産と社会の関係

マヤ遺跡から考える文化遺産と社会の関係

多様な思惑が交錯するマヤ遺跡

マヤ文明といえば、考古学や文化人類学といった研究により学術的に解明されつつも、観光に関わるメディアや業界などによって神秘的なイメージで語られることも多く見受けられます。2012年12月にマヤの暦が終わることから「世界が滅びる予言」とされて、多くのメディアと観光客がマヤ遺跡に集まりました。
中でもマヤ文明の代表的なピラミッド「エル・カスティーヨ」があるメキシコの「チチェン・イツァ」は、年間200万人ほどが訪れる人気の観光地です。しかし、遺跡を取り巻く現状をみると、行政や観光業界、地域住民の思惑が交錯しています。

置き去りにされた住民の行動

1988年に世界遺産に登録されたチチェン・イツァの遺跡は、遺跡公園として整備されてきました。そして州政府や観光業界が車の両輪となり、ビーチリゾートやホテル、あるいは高速道路といった観光開発を行ってきました。
高度に観光化が進んだ結果、地域住民の日常は激変しました。2004年になり、ずっと蚊帳の外に置かれていた住民は公園内で露店商を始めます。不法行為なのですが、州政府も観光業界も内部でさまざままな思惑が入り乱れているために、結果的にこれは黙認されて今にいたります。住民たちも、そんな州政府や観光業界の状況を見てしたたかに立ち回り、今では1000人にも及ぶ露店商が公園内で商売しています。

今を生きる遺跡と観光のあり方

遺跡は古代に造られましたが、一度は忘れ去られたものです。発掘などによって再発見され、「この遺跡にはこんな価値がある」などと意味付けがなされて今、存在しています。その意味付けも時代によって変化します。つまり、遺跡は「今を生きるもの」なのです。観光価値が高いものは、国や州といった行政、観光関連業界が大きく関わってきます。
持続可能な観光のあり方は近年になって問われるようになりました。その実現には、地域住民の関わりや地域創生は不可欠です。観光のプロフェッショナルには、それらを含めた全体像を捉える力が求められています。

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公立小松大学 国際文化交流学部 国際文化交流学科 教授 杓谷 茂樹 先生

公立小松大学 国際文化交流学部 国際文化交流学科 教授 杓谷 茂樹 先生

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文化人類学、観光人類学、社会学

メッセージ

「当たり前」と思っていること、例えば日本人は当然のように玄関で靴を脱ぎますが、海外では当然ではありません。それが文化であり、「当たり前」が違うとカルチャーショックを受けたりします。自分の当たり前を絶対と思わずに、疑ってみてください。日本人同士でも、男女や年代の違いで「当たり前」は違います。相手の当たり前を尊重した上で、自分の当たり前を説明できると、争いごとも回避できるでしょう。自分の価値観や当たり前の相対化にトライしましょう。それが学問への入り口になります。

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