映画の「過去、現在、未来」を探る、映画学の魅力に迫る
昔の映画に対するイメージは誤解に満ちている?
私たちが抱いている昔の映画のイメージのなかには、歴史的な事実と異なっているものもあります。
例えば、昔の映画はすべてモノクロ映画だと思っていませんか? また、サイレント映画(俳優の語る音声や音響が入っていない映画、無声映画とも言われる)は無音で鑑賞するものだと思っていませんか? さらに、昔の映画は映像が汚れていて鮮明ではなく、音も聞き取りづらいと思っていませんか? 実はこれらはすべて誤った認識です。サイレント映画の時代は非常にカラフルな映像ばかりでした。また、サイレント映画を上映する映画館では弁士の語りと伴奏音楽が聞こえていました。そして昔の映画も現在と同様に、非常に美しい映像と音声だったのです。
デジタルよりもアナログが頼り!?
面白いのは、過去の映画フィルムの保存方法です。デジタル技術を用いて映像をデジタル化すれば、半永久的に保存できるように思いますが、意外や意外、実はそうではありません。デジタルデータは数年おきにフォーマットが変わるため、数十年後に確実に再生できる保証はないのです。
一方、映画フィルムは劣化しやすいという欠点はあるものの最適な環境で保管すれば数百年はもつといわれています。そこで「映画フィルムを安全に保管しつつ、各時代に合ったデジタルフォーマットに変換する」という方法が、世界の映画フィルムアーカイブの共通認識とされています。
「映画学」の面白さとは?
このように、過去の映画作品やフィルム保存のための最新技術、また表現技法やスタッフの役割など、いろいろな観点から映画を研究するのが「映画学」です。さまざまな時代や国の映画を見て研究することで、その国の文化や歴史的な背景、多様な文化、ものの考え方などを知ることができます。
また普段何気なく見ている映像を違った視点で見ることができるといった面白さもあります。日本ではまだ研究者の数がそれほど多くない映画学ですが、それだけに未知の可能性を秘めた学問と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 国際人間科学部 グローバル文化学科 教授 板倉 史明 先生
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