おいしさを裏付ける数値とは? 「味」を科学した食品開発
食べ物の味を機械で科学的に測定
菓子やパンなどの食品開発では、味はどのように決められているのでしょうか。味の設計で重要なのは「広く消費者に好まれる味」を作ることです。多くの食品会社では実際に人が味を評価して設計していますが、人の味覚は体調などに左右されたり、辛いもののあとに甘いものを食べるとより甘く感じたりと、不安定な側面があります。これに対して、味を数値として科学的に測定できる機械を使えば、客観的で安定した味の設計が可能です。市場調査などから最も好まれる味を科学的、統計的に解析して、ヒット商品を生み出す食品ビジネスについての研究が行われています。
おいしさを裏付ける味の数値化
例えばコーヒーは、豆の産地の違いはもちろん、焙煎(ばいせん)の度合いや粉砕の仕方、抽出方法によっても味が変わります。さまざまな人の好みの中で、一番多くの人が「おいしい」と感じる焙煎加減や抽出法を調べて、そのコーヒーの味を機械で測定します。測定では、基本の五味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)それぞれが数値で表されるほか、「最初に来る甘味」や「後から来る甘味」のようにその味を感じるタイミング(先味・後味)まで分析することが可能です。これらの測定結果を統計的に解析して、一番広く好まれる味を求めて商品開発が進められていきます。
味のイメージを的確に伝える製品訴求の言葉選び
科学的な測定によって最適な味の数値のコーヒーができたとしても、「甘味何点、苦味何点のコーヒー」ではどのような味なのか消費者に伝わりません。そこで商品化にあたっては、「まろやか」「華やか」など消費者がイメージしやすい言葉で表現することが必要です。これについても消費者調査を行い、その味を表すにふさわしい、消費者のイメージにマッチする言葉が選ばれます。
今後はコーヒーだけでなく、さまざまな食品についても企業と連携して、科学的な味の測定に基づいた商品開発からマーケティングまでの「食品のビジネスモデル構築」が目標とされています。
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先生情報 / 大学情報
帝塚山学院大学 食環境学部 食イノベーション学科 教授 阪口 宗 先生
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