「新しい技術だから買う」のか? 消費者行動論の研究
真新しいサービスの使い手
コロナ禍以降、「AR(拡張現実)技術」をビジネスに取り入れる企業が増加しました。例えばスマートフォンを使用して、家にいながら眼鏡やメークを試すことができる、あるいは自分の部屋に家具を配置してレイアウトをシミュレーションできるといったサービスが登場しています。マーケティング領域においては、買い物環境や顧客体験を向上させるといわれているARですが、消費者はどのような考えのもとに、新しいサービスやテクノロジーを「採用する」もしくは「採用しない」のでしょうか。ARだけでなく、電気自動車や自動運転といった新しい技術は、「新しい」という理由だけで使われる訳ではないのです。
心の動きを見る
心理学的な観点から考えてみると、例えばあるサービスを早く採用した人はその技術に関心があり、評価する能力もあるため、その技術がもたらす良い結果を予測しやすいという傾向があります。半面、そうした関心が薄い人は評価することもできないため、採用が遅れやすいといわれています。ほかにも、「使った方が良い」というプレッシャーを周囲の人から感じて採用する人や、あるいは「イノベーターのような人物」という自己イメージをつくりたいという動機で、新技術をいち早く取り入れる人もいます。
異分野との連携
いかに革新的な技術が使われた製品・サービスであっても、消費者に受け入れられなければ市場から姿を消してしまいます。「消費者行動論」という学問分野では、新技術を受け入れる側の消費者が何を考えているのかについて考えています。前述したように、心理学の手法を用いて消費者の意図や動機を探るだけでなく、時には研究者自らが技術やテクノロジーに触れながら「使いやすさ」や「使いにくさ」を考えることも有効です。また、消費者行動論の枠にとどまらず、工学や情報学といった異なる研究分野と協調して「同じ現象に違うところからアプローチする」ことで、新たな発見があり、研究に奥行きが生まれるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。