みんなが豊かに暮らす方法を経済学的に考えると、どうなる?
平等な社会って、どんな社会?
社会Aは、年収10億200万円のお金持ちが1人、年収ゼロの人が1人、残りの庶民は年収200万円です。社会Bは、年収10億円のお金持ちが1人、残りは年収200万円の庶民です。社会Aのお金持ちから200万円税金をとって、年収ゼロの人に配ると社会Bになるわけです。社会Cは、年収10億200万10円のお金持ちが1人、残りは庶民が1億人で全員年収200万円です。社会Cでお金持ちから10億円を税金として徴収し、1億人の庶民に配ると全員が平等に200万10円になります。これでみんなが平等だから「よい」社会になったと言えるのでしょうか。
民主主義の意外な盲点
民主政治では庶民に支持される政策が実現します。だから社会Cで「お金持ちから税金をとって、みんなに分配します」と主張する政治家がいれば、その人が当選する可能性は高いでしょう。そうなると、お金持ちから10億円もの税金をとって、みんなに分配するような社会が実現することもありえます。実はこれと似たようなことが、日本では行われてきました。東京がしっかり稼いだ分を政府が税金として吸い上げ、地方に分配してきたのです。その結果、東京の力は衰退し、アジアの中心は東京を離れてシンガポールや上海に移ってしまったのです。
「機会の平等」と「結果の平等」
富の分配に関して経済学には、「機会の平等」と「結果の平等」という2つの考え方があります。人生には運不運があるのだから、不運な人には社会が手を差し伸べて、みんなが平等になるべきだと考えるのが「結果の平等」です。
一方で、お金持ちになるならないは、個人の努力によるはずであり、みんなが同じスタートラインから出発して差がつくのなら、それは認めるべきではないかというのが「機会の平等」の考え方です。2つの考え方のどちらかが正解というわけではありません。どちらをどれだけ重視するのかを考え、みんなが豊かになる案を作るのが経済学の重要な役割なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 経済学部 教授 芦谷 政浩 先生
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