講義No.13643 数学

数学・解析学は、理論に基づいて未来を予測する!?

数学・解析学は、理論に基づいて未来を予測する!?

実際の現象に活用される解析学

数学の分野の一つである解析学は、微分や積分などを用いて社会現象や物理現象、生物学的な現象などを調べていく学問です。なかでも偏微分方程式は、空気や水といった流体の動き、物質の熱の伝わり方、石鹸膜の構造などの物理モデル、感染症の拡散予測や、細胞性粘菌の挙動予測などにも活用されています。
これらの数理モデルは特に、非線形な偏微分方程式で表されます。非線形とは、線形でないことを指します。例えば、「y=x」をグラフにすると直線になり、「y=x²」では曲線(放物線)を描きますが、この「直線ではない状態」が非線形です。非線形の状態は「y=x²」以外にも無数に存在しています。

分散波の性質を示す方程式

偏微分方程式の一つ、「シュレーディンガー方程式」は、量子力学で現れる基礎的な偏微分方程式です。電子や陽子などの極少な物体(量子)は、粒子としての性質と波としての性質をあわせ持っています。シュレーディンガー方程式は、その波が分散する様子を表そうとするものです。この方程式を用いた数理モデルによって、さまざまな量子力学的現象が記述されています。特にシュレーディンガー方程式に非線形な効果を取り入れた非線形シュレーディンガー方程式が用いられています。この非線形シュレーディンガー方程式は、分散という波を広げようとする効果と、非線形という波を集める効果の二つの性質が混在しています。どちらが優位になるかによってさまざまな解が現れ、すべては解明されていません。

理論的で正確な未来予測へ

時間的な発展を記述する偏微分方程式は、未来予測につながります。例えば、津波がどのように押し寄せるかや感染症がどのように広がっていくかなど、未来にどうなるかを表すさまざまな数理モデルとそれに基づいたシミュレーションがあります。それが本当に正しいのかを理論的に証明することも数学・解析学の役割の一つです。解析学は、あらゆる分野で社会とつながっているのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 理学部 数学科 准教授 戍亥 隆恭 先生

大阪大学 理学部 数学科 准教授 戍亥 隆恭 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

非線形偏微分方程式、数学、解析学

メッセージ

あなたが少しでも興味を持ったものは何でも、自分なりに調べたり、考えてみたりしましょう。そして関心が深まれば、それは一生関わるものになるかもしれません。私が専門とする数学について言えば、高校までは公式や定理など答えを導き出す道具をたくさん学びますが、大学ではその道具とは何か、なぜそうなるのかといった側面を理論的に構築します。そうした力を身につけるからこそ、他分野でも活用できるのです。なかでも解析学は社会現象と直結しています。興味があるなら、ぜひ一緒に探究しましょう。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。