数学・解析学は、理論に基づいて未来を予測する!?
実際の現象に活用される解析学
数学の分野の一つである解析学は、微分や積分などを用いて社会現象や物理現象、生物学的な現象などを調べていく学問です。なかでも偏微分方程式は、空気や水といった流体の動き、物質の熱の伝わり方、石鹸膜の構造などの物理モデル、感染症の拡散予測や、細胞性粘菌の挙動予測などにも活用されています。
これらの数理モデルは特に、非線形な偏微分方程式で表されます。非線形とは、線形でないことを指します。例えば、「y=x」をグラフにすると直線になり、「y=x²」では曲線(放物線)を描きますが、この「直線ではない状態」が非線形です。非線形の状態は「y=x²」以外にも無数に存在しています。
分散波の性質を示す方程式
偏微分方程式の一つ、「シュレーディンガー方程式」は、量子力学で現れる基礎的な偏微分方程式です。電子や陽子などの極少な物体(量子)は、粒子としての性質と波としての性質をあわせ持っています。シュレーディンガー方程式は、その波が分散する様子を表そうとするものです。この方程式を用いた数理モデルによって、さまざまな量子力学的現象が記述されています。特にシュレーディンガー方程式に非線形な効果を取り入れた非線形シュレーディンガー方程式が用いられています。この非線形シュレーディンガー方程式は、分散という波を広げようとする効果と、非線形という波を集める効果の二つの性質が混在しています。どちらが優位になるかによってさまざまな解が現れ、すべては解明されていません。
理論的で正確な未来予測へ
時間的な発展を記述する偏微分方程式は、未来予測につながります。例えば、津波がどのように押し寄せるかや感染症がどのように広がっていくかなど、未来にどうなるかを表すさまざまな数理モデルとそれに基づいたシミュレーションがあります。それが本当に正しいのかを理論的に証明することも数学・解析学の役割の一つです。解析学は、あらゆる分野で社会とつながっているのです。
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