講義No.11763 数学 生物学

生物に共通した行動パターン:レヴィウォーク

生物に共通した行動パターン:レヴィウォーク

ダンゴムシはどう動く?

ダンゴムシが障害物など何もない広い平地で歩いたら、どう動くでしょうか。これを実験で確認するため、ダンゴムシ用ランニングマシンにダンゴムシをのせます。これは球体で、一歩進むと球体が回り、ダンゴムシは常に定位置にいるというものです。するとダンゴムシは自由でぐちゃぐちゃした動きの中で時折、極端に長い直線移動をします。このような動きをレヴィウォークと呼びます。昆虫やヒトを含めた哺乳類だけでなく、バクテリアやがん細胞、免疫にかかわるT細胞も共通してレヴィウォークの動きをすることがわかっています。

レヴィウォークのメカニズム

なぜ生き物はレヴィウォークをするのでしょうか。生き物が移動する時、餌などを探すことが重要な目的となるため、レヴィウォークがこれらを最も効率よく探索できる動きなのだという説が提案されています。一方、脳がどのようにしてレヴィウォークのパターンを作り出しているのか、まだ詳しく解明されていません。
そこで、脳の神経回路の数理モデルを作り、レヴィウォークがどんな条件の時に生まれるかを考えてみます。神経回路の相互作用が弱いと不安定な動きに、強いと壁に沿うような安定した動きになります。その2つの中間点でレヴィウォークが起こります。このように、ものの振る舞いががらりと変わる点を相転移点と呼び、脳が相転移点にちょうどよくチューニングされたときにレヴィウォークが現れ、動きのパフォーマンスが最適化されると考えられます。

知性と能力を引き出す可能性

実際にレヴィウォークをする時の脳の活動がとれれば、さらに解明が進むでしょう。人間がfMRI装置で脳の活動を調べながら、バーチャル空間で歩いて探索をするという手法も考えられます。さまざまな生物が共通の動きをするということは、それが生命の根源的な基盤となっているとも推測できます。そうであれば、レヴィウォークの状態を作ることで人間の知性や能力をうまく引き出せるようになるかもしれません。

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同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 助教 阿部 真人 先生

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複雑系科学、数理生物学

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メッセージ

自分の身の回りのさまざまなことに、どんな法則性があるかを考えてみると面白くなると思います。まったく違う現象との共通点が見えてくることもあり、驚くかもしれません。それをうまく導いてくれるのが数学です。
例えば生き物の形や芸術作品にも数学は深く関わっています。フィボナッチ数列による黄金比は『ダ・ヴィンチ・コード』という映画になった小説の鍵になっています。いろいろなところに数学が関わっていることがわかると、数学に対する考え方が違ってくるでしょう。

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