米中対立について考える

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米中新冷戦

中国が台頭する中、米中間の緊張が高まっています。そうした状態を米中新冷戦と呼ぶ論者もいます。この表現が米ソ冷戦を意識した表現であることは言うまでもありません。冷戦とは米ソ間の権力闘争であり、体制間の優劣を競うイデオロギー闘争でありました。現在の中国が体系的なイデオロギーを世界に提示しているわけではなく、新冷戦という見方には異論もあります。しかし米中の政治体制には明らかに大きな違いがあります。米中間に権力闘争は言うまでもなく、体制間競争が存在するのは確かです。新冷戦という見方が全く的外れというわけではありません。

米中新冷戦の起源

新冷戦の起源は2013年の習近平国家主席の登場に求めることができます。習近平主席は中国の海軍力を著しく増強し、周辺海域への勢力拡大を図ったばかりか、アメリカが第二次世界大戦以来事実上の支配下に置く太平洋への進出もうかがう姿勢を見せました。中国の海洋進出を許せば、やがてアジアには中国の覇権が打ち立てられることになるでしょう。アメリカはアジアから追い出されるばかりか、巨大なパワーと直接向き合わなければならないことになります。
アジア、そしてヨーロッパにおいて覇権国の出現を許さないというのはアメリカの基本的な外交方針です。まさにその方針からアメリカは第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦を戦い、覇権国の出現を防いできたのです。最近のアメリカが中国に対して強い姿勢を取っているのも同じ理由からです。

米中新冷戦を「長い平和」に

アメリカの冷戦史家ジョン・ギャディスが打ち出した議論に、「長い平和」論というものがあります。冷戦と言えば、米ソ間の緊張状態が注目されがちです。しかし、ギャディスは米ソ間に戦争が起こらなかった点に着目し、冷戦を「長い平和」と捉える見方を提示したのです。
米ソ冷戦が約40年間続いたように、米中新冷戦も長く続く可能性があります。私たちはそのことを覚悟したうえで、米中新冷戦を「長い平和」にするための方策を考えていかなければなりません。

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大阪大学 法学部 法学科 教授 高橋 慶吉 先生

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