物質の知られざる「顔」を引き出す物性物理学とは
物質に潜む思いがけない可能性
「物性物理学」は、なじみのない学問かもしれません。これは高校の物理は力学、電気、波、音、光、原子といった学習内容で構成されていますが、これら物理の手法に加えて化学などの分野も使って物質の性質を研究する学問(=物性物理学)にはほとんど触れていないからです。物質の性質を実験と理論の両面から追究していく、大学で初めて学ぶ重要な学問の分野です。物質は一般的に知られている性質のほかにも、意外な性質をもっています。例えば、物質に外からさまざまな力を加えてどのような変化が起こるのかを実験し、その知られざる可能性を引き出すのも「物性物理学」なのです。
水に超高圧力をかけると「つめたくない氷」になる
特に、超高圧力、超低温、超強磁場などの極限環境に物質をおくと、通常とは異なった驚きの性質が現れます。例えば私たちが普段生活している環境では、水は温度によって氷や水蒸気に変化することが知られていますが、水に高圧力をかけると、温度を下げなくても変化を起こして氷になるのです。でもこの氷は通常の氷とは分子の並び方が異なる氷なのです。さらに高い圧力ではセ氏100度を超えても溶けない「熱い氷」を作ることもできます。このように私たちにとってごく身近な物質である水が、極限環境ではまったく別の「顔」を見せるのです。
まだ見ぬ世界で物質はどんな表情を見せるのか
しかし視点を変えてみると、物質にとっては地球の環境の方が特殊なのかもしれません。広い宇宙に目を向けると、私たちが極限環境だと思っている世界が、ごく当たり前であるからです。このような極限環境では、物質を構成する元素や化合物同士の結びつきはどのように変化し、どんな顔をしているのでしょうか。極限環境下の物性物理学は、まだ見ぬ世界をシミュレートして、物質の隠れた可能性を引き出し、さらには普遍的な法則を探っていく、ワクワクする学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 基礎工学部 電子物理科学科 物性物理科学コース 教授 清水 克哉 先生
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物性物理学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?