高度な望遠鏡とネットワークが支える「マルチメッセンジャー天文学」
ガンマ線望遠鏡の進化
天体観測には望遠鏡が不可欠です。レンズで可視光線を見ることから始まった天体望遠鏡も徐々に進化を遂げて、ここ20年ほどで「地上ガンマ線望遠鏡」の開発が進みました。
爆発的な天体現象に伴ってガンマ線が大量に放出される「ガンマ線バースト」は、数秒から数時間という短時間しか続かず、また、宇宙のあらゆる方角でランダムに起きるために見える範囲が狭い望遠鏡では観測が困難です。
しかし、2000年代に開発された「MAGIC望遠鏡」は、瞬時に方角を変えることができ、かつ広いエネルギー範囲のガンマ線を感度よく捉えられるようになり、地上ガンマ線望遠鏡として世界で初めてガンマ線バーストを捉えました。
マルチメッセンジャー天文学の誕生
2017年には、ガンマ線とニュートリノの同時観測に成功しています。ニュートリノが到来したことを南極の検出器がキャッチしたとき、同じ方向からガンマ線が観測されました。そのデータを組み合わせた結果、ブラックホールを中心に激しく活動する「活動銀河核」からニュートリノとガンマ線が同時に放射されていることがわかったのです。
この同時観測は史上初の快挙で、電磁波のガンマ線、素粒子のニュートリノを組み合わせた新しい観測法の誕生の瞬間でもありました。この研究領域を「マルチメッセンジャー天文学」と呼びます。
世界中のネットワークで観測
マルチメッセンジャー天文学は、各種の観測機器と世界中の研究者のネットワークによって支えられています。地上望遠鏡、衛星、ニュートリノ検出器などの観測機器が世界中に点在しており、ひとつの場所で何かを観測したと同時に、ネットワークを通じてアラートが発せられます。それに合わせてそれぞれの場所から瞬時に観測を始めて、その観測結果を持ち寄って解析するのです。
現在、重力波との同時観測も期待されており、今後、ますます詳しく宇宙の謎が解明されていくはずです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 理学部 物理学科 教授 櫛田 淳子 先生
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宇宙線物理学、高エネルギー天体物理学先生が目指すSDGs
先生への質問
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