高エネルギー天体現象の秘密を解くカギ? 宇宙線の起源を特定せよ!

高エネルギー天体現象の秘密を解くカギ? 宇宙線の起源を特定せよ!

宇宙線はどこからくるのか

宇宙空間には、アルファ線やベータ線などの粒子線や、ガンマ線のような高エネルギー電磁波が飛び交っており、「宇宙線」と呼ばれます。これらは地球にも常に降り注いでいて、手のひらほどの範囲に、1秒に1個ほど届いています。多くの宇宙線は電荷を持ち、宇宙の磁場によって進路が曲がるため、起源をたどるのは困難です。しかし、極めて高エネルギーの宇宙線は磁場の影響を受けにくく、直進すると考えられています。
その発生源として、ガンマ線バーストや活動銀河核(AGN)が候補とされていますが、正体はまだ謎です。そんな中、2021年5月、米ユタ州で国際共同研究「テレスコープアレイ実験」により、人類史上2番目に高エネルギーの宇宙線が観測されました。「アマテラス粒子」と名付けられ、宇宙の謎に迫る手がかりとして注目されています。

高速で飛来する宇宙線の観測

高エネルギー宇宙線は、数が非常に少なく極めて小さいため、直接の観測は困難です。宇宙線が飛来したとき、大気中の窒素や酸素などの原子核とぶつかって大量の二次粒子が発生します。この現象を「宇宙線空気シャワー」といい、これを観測します。テレスコープアレイ実験では、砂漠地帯にベッド程度の大きさの検出器を1.2km間隔で507台置き、琵琶湖ほどの面積で観測しています。さらに宇宙線が大気に突入した際に発光する現象をとらえる「大気蛍光望遠鏡」でも観測しています。

宇宙高エネルギー天体現象の謎に挑む

超高エネルギー宇宙線の観測から起源天体の解明が期待されています。しかし今のところ、アマテラス粒子を調べても、起源となる天体の候補は見つかっていません。そのため未知の天体現象や、既存の理論を超えた新物理起源に由来する可能性もあります。
謎の解明には宇宙線物理学だけでなく、検出器の開発に必要な電子工学や、解析に必要な数理科学の知識が必要で、最新のAI技術も導入され始めています。あらゆる分野の知見を総動員することで、宇宙線の向こうにある宇宙の謎に迫れるのです。

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大阪電気通信大学 工学部 基礎理工学科 数理科学専攻 准教授 多米田 裕一郎 先生

大阪電気通信大学工学部 基礎理工学科 数理科学専攻 准教授多米田 裕一郎 先生

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宇宙線物理学、粒子線天文学

先生が目指すSDGs

メッセージ

やりたいことをやるためには、まず目の前のことに取り組むことが大切です。私はずっと宇宙を学びたくて、そのために物理学だけでなく、電子回路やプログラミングの知識、英語でのコミュニケーション力、サソリやヘビが出る砂漠地帯を生き抜くサバイバル力も身につけました。おかげで今は、自分の思うように宇宙研究に取り組めています。やりたいことを見つけたら視野を広げて、必要な知識や能力は何かを考えて学んでください。そして夢を諦めないでください。諦めなければ、必ずやりたいことにたどり着きます。

大阪電気通信大学に関心を持ったあなたは

本学は工学を中心に建築、情報、医療技術、リハビリ、スポーツ、ゲーム、デザインなどの学科/専攻を設置している「技術系総合大学」です。在籍学生数は大学院を含めて約5,887人(2023年5月1日現在)。高度なモノづくりができる「実践型教育」理念のもと、社会で実際に役立つ技術と知識修得をめざします。「3D造形先端加工センター」などの最先端設備や「資格学習支援センター」によるサポート体制が就職率の良さに繋がっています。また、2つのキャンパスは京都や兵庫近辺からのアクセスの良さも魅力の一つです。