なぜ行動を変えられないの? 結果と効力、2つの視点から考える

結果予期と効力予期
毎日コツコツと勉強を続けることの大切さは頭では理解していても、なかなか行動に移せず、ついスマートフォンに手が伸びてしまう経験はないでしょうか。また、健康を維持したり、症状を改善したりするために運動が必要と分かっていても、実行できない人は少なくありません。こうした人たちの行動を変える、つまり行動変容を促すには、「結果予期」と「効力予期」という視点からアプローチすることが有効です。「結果予期」とは、例えば毎日ジョギングをすれば体重が減るというような「行動の結果に対する期待」を指します。一方、「効力予期」とは、そのジョギングを自分は継続できるはずだという「行動の遂行に対する自己の信念」を意味します。
顧客獲得への応用
「結果予期」と「効力予期」は、スポーツビジネスにも応用できます。例えばJリーグのチームがホームスタジアムにより多くの観客を集めたい場合、人々が「なぜスタジアムに来ないか」を知ることが大切です。これまでスタジアムに行ったことのない人々を対象にアンケート調査を行い、「スタジアムにいっても楽しくない(結果予期)」「スタジアムに行くことができない(効力予期)」理由を明らかにできれば、試合以外にもイベントやグルメといった楽しさがあることを伝える、アクセス方法やチケットの買い方をわかりやすく伝える、という手段を講じることができます。この手法は、スキー人口の減少に悩むスキー場の集客にも役立つでしょう。
幅広い応用分野
運動の継続だけでなく、学習の継続においても、直近の運動・学習体験でのフロー経験(没頭できる快の体験)が、その後の行動継続に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。この現象も「結果予期」「効力予期」の視点を用いることで、より詳しく理解できるでしょう。このようにスポーツ心理学は、競技やアスリートだけが対象ではなく、地域のプロスポーツやレジャー産業を盛り上げたり、人々の運動習慣定着の方法を考えたりと、幅広い分野に応用できる学問なのです。
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東海大学文理融合学部 経営学科 准教授田中 靖久 先生
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