遺伝子組換え細胞で判定する、革新的なアレルゲン性評価法
アレルゲン性って何? 化学物質の安全性指標
私たちは食べた物や触れたものによって、時に鼻炎や皮膚炎、腹痛などのアレルギー症状を起こすことがあります。私たちには異物から体を守るための免疫システムが備わっていますが、そのシステムがある特定の物質に対して過剰に反応してしまうと、アレルギー反応としてさまざまな症状を引き起こしてしまうのです。私たちは日常生活でさまざまな化学物質に接する機会があります。化学物質は食品や医薬品、化粧品などに含まれており、私たちに恩恵をもたらしますが、安全性が確保されていなければなりません。重要な安全性指標の一つに、免疫学的な安全性(アレルゲン性)があります。
化学物質のアレルゲン性評価法とその問題点
化学物質のアレルゲン性を評価する方法の一つに皮膚感作性試験があります。皮膚感作性試験とは、化学物質が皮膚に接触した場合にアレルギー反応を引き起こすかどうかを調べる試験です。元来、この試験は実験動物を用いて行われていましたが、動物福祉への配慮や製品開発の効率化の観点から動物の代わりに培養細胞を用いる試験法が開発されました。しかし、この方法には、試験コストが高く、手順が複雑で、時間がかかるという改良すべき点があります。そして、化学物質の中には体内で変化(代謝活性化)することでアレルゲン性が高くなる物質があり、それら化学物質も含めて評価できるような方法が必要です。
遺伝子組換え細胞で、新しいアレルゲン性評価法
そこで新しい方法が考えられました。遺伝子組換え技術を用いて化学物質の代謝活性化能力を持った培養細胞を作り、リアルタイムRT-PCRという技術でアレルゲン性(感作性)を評価する方法です。リアルタイムRT-PCR用に探索した新しい感作性マーカーを用い、代謝活性化する化学物質も含めて評価できる試験法です。適切な判定基準を設定することで、既存法よりも多様な化学物質の感作性評価に適用できるだけでなく、安価で簡便、迅速に感作性の評価を行えるような試験法の開発がめざされています。
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東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 黒瀬 光一 先生
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