「オリジナルの音楽を創る」とは
音楽制作は理論と感性の融合
ある一つの「音楽」を創る行為は、いわばある一つの「雰囲気」を創ることを意味します。その雰囲気を表現するために、どんな音と音とを組み合わせるのかは、芸術的な感性だけでは成り立ちません。音楽を創るうえで最も難しいのは、音楽理論と感性を一致させる訓練なのです。具体的には、音と音とを組み合わせて、言葉で説明でき、説得力を持つ形で聴き手に伝えられるかです。これは、建築物を造ることにも似ています。優れた建築物はデザインが良く、かつ倒れずに立っていることが必須です。音楽もまた、理論を知らずに感性だけですばらしい曲を創るとされる人も、無意識のうちに何らかの構築体系を使っています。
表現者に求められる探究姿勢
現在、手近に聴ける音楽は、9割方がメディア、つまりYouTubeやテレビ、ゲーム、映画などに付属していると考えられます。そのような時代で、表現者として自分だけの音楽スタイルを探し続ける姿勢が重要です。「芸術は魂に傷を付ける」と言われることがあります。若い時期に出会う多様な音楽は、やがて自分のオリジナルに育っていく傷でもあります。つまり自分以外のものからの影響を受けとめることは、芸術領域の特徴と言えます。その音楽を聴く前と聴いた後では人生観が変わってしまう、そんな出会いを経験することが、音楽表現を豊かにするはずです。
芸術としての体験ができる音楽
メディアで見つけにくい「芸術的な音楽」の形が世の中にはたくさんあり、奥深い世界が広がっています。その一つが、スピーカーのオーケストラと呼ばれる「アクースモニウム」です。コンサートの舞台に演奏者はおらず、録音された音を多いときで100ものスピーカーで聴くというやり方です。この手法は1948年にパリで生まれた「ミュージック・コンクレート」の発展形で、楽器や歌声だけでなく、合成された音色、風景の音や雑音なども取り入れてパソコンで制作します。つまり録音技術で、昔は誰も「音楽と思わなかった音」を組み込んで、「音楽」を創っているのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東海大学 教養学部 芸術学科 准教授 檜垣 智也 先生
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作曲、音楽制作、サウンドデザイン先生が目指すSDGs
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