サードプレイスが、都市の豊かさ、自由な社会のカギとなる

平等で個人として過ごせる場
私たちが日々過ごす空間は、大きく分けて3つあります。生活の基本となる自宅や家族が第1空間、長い時間を過ごす職場や学校が第2空間です。双方とも強い人間関係があり、それぞれ義務や役割、責任などをもっています。
いずれにも属さない場所を、「サードプレイス(第3空間)」といいます。家庭や学校とは違う人間関係や、異なる価値観に出会える場所です。上下関係がなく平等で、個人として自分らしくいられる心地よさもあります。考えの違う人が一緒にいたり、マイノリティの集まりだったり、カフェや居酒屋、銭湯など、あらゆるシーンがサードプレイスになります。
関係や考えをゆるめる自由さ
例えば、商店街で駄菓子屋を始めると、そこは子どもたちのサードプレイスになります。学校や家庭と違う関係性が生まれて、いろいろな話をしながら多くの気づきを得るでしょう。そしてそこは、親のサードプレイスにもなります。子どもがそこにいれば、親同士でおしゃべりしたり、何か用事を済ませたりできます。商店街では、人々が来るようになって店の継続を決めた人もいます。一つのサードプレイスは、多角的に影響が広がります。
また、現在はコスパやタイパといった効率性や合理性などが強く求められる時代です。ある場所に、何もしなくてもいい「空き地」が作られて、そこにいる人々は普段とは違うさまざまな表情を見せています。都市にそんな場所がいくつもあると、ローカルな暮らしに奥行きの深さや厚みが生まれます。
生き方の豊かさを育む可能性も
家庭と学校の往復だけの生活は、周囲と似た考えや価値観に偏りがちです。サードプレイスがあると、そこから少し離れて多様な人や考えに触れ、気持ちをゆるめることができます。生きにくさを感じている人は、居場所を見つけることができるかもしれません。
日本は今、生き方としての豊かさが求められる時代です。その実現に、サードプレイスはあらゆる可能性を秘めていることから、都市社会でいかにそれを存在させるのかが問われているのです。
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文京学院大学ヒューマン・データサイエンス学部 ヒューマン・データサイエンス学科(仮称) ※2026年4月設置構想中 (現:人間学部) 助教岩舘 豊 先生
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