データサイエンスが教える、人間の動き

人間のデータを取得・分析
データをさまざまに分析して、新しい知見につなげる学問をデータサイエンスといいます。スマートフォンが普及した現在、歩数や心拍数といった身体データを計測してヘルスケアに役立てることはすでに一般的になっています。
しかし、人間の「歩行」についてのデータを得ることは簡単ではありません。人間は上半身と下半身が逆の動きをするねじれ=回旋によって歩行します。加えて、目から多くの情報を集めるために、歩行中の頭の位置を安定させる必要があります。そのため、歩行中には回旋動作を含めた複雑な制御が行われていて、現在のロボット技術でも再現が困難であるといわれています。
回旋の仕組みを明らかに
回旋動作の制御の仕組みを明らかにするためには、三次元動作分析装置を用いた研究が有効です。被験者の体に多くのマーカーを装着して、カメラで歩行の様子を記録します。そこから得たマーカーの動きや位置関係を計算式に入れ、さらに体が床から受ける反力などの数値を加えることで、歩行中の関節の角度や速度、重心の位置などをデータ化できます。一般的に、骨盤を含めた下半身と上半身が左右反対にねじれるとされていますが、研究によって肋骨(ろっこつ)のある胸郭の中心付近にその起点があることがわかってきました。陸上界では「足がみぞおちから生えているように体を動かす」という通説がありますが、こうした研究はこれに科学的根拠を与える可能性があります。
データで客観性を与える
また、理学療法(リハビリテーション)の分野でも、高齢者の生活の質を左右する歩行が重要視されています。しかし、歩行の評価は多くの場合、目視による観察に頼っているため、理学療法士の経験やスキルによって評価にばらつきが出てしまうという課題があります。そのためデータサイエンスを活用して、より客観的な根拠を基にした評価方法の確立が求められています。動きをデータで捉えることで、誰が見ても同じ基準で判断できる、再現性のあるリハビリテーションが可能になるのです。
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先生情報 / 大学情報

文京学院大学ヒューマン・データサイエンス学部 ヒューマン・データサイエンス学科(仮称) ※2026年4月設置構想中 (現:保健医療技術学部) 助教飯田 開 先生
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