ことばの障害から認知症にアプローチする言語聴覚士

ことばの障害から認知症にアプローチする言語聴覚士

認知症によることば・コミュニケーションの障害

高齢化に伴い認知症の患者は増加しています。また、一口に認知症と言ってもアルツハイマー型認知症や、脳梗塞が原因で起きる血管性認知症などさまざまな種類があります。どういった種類の認知症であるかを判断するのは医師による診察や、CTやMRIの画像診断も必要ですが、言語聴覚士は認知症患者に特徴的なことばの障害(言語障害)や記憶障害によって引き起こされるコミュニケーション障害から認知症にアプローチします。

脳のどの部位が障害されているか

アルツハイマー型認知症は、初期の症状ではことばの障害は目立たず、もの忘れといった記憶障害が目立ちます。しかし血管性認知症では、初期からことばの障害が目立つことがあります。これは、血管性認知症の原因である脳梗塞でことばをつかさどる部位が障害されることがあるためです。一方、アルツハイマー型認知症は変性疾患と言って、記憶に関わる脳から徐々に脳全体が障害されていくため、記憶障害が最初に目立ちますが、特徴的なコミュニケーションの障害も実は潜んでいることがあります。
言語聴覚士は、医師をはじめとした多職種と協力しながら、ことばやコミュニケーション障害を手掛かりに、まだまだわからないことの多い認知症の解明に携わっています。

リハビリテーションで認知症の人を支える

言語聴覚士は言語聴覚療法を用いて認知症患者のコミュニケーションの支援も行います。認知症では、特に患者同士が集う集団リハビリテーションに効果があるとされています。そしてこれらのリハビリテーションは、薬による治療と併用することで認知症の進行を遅らせるというエビデンスもあります。
リハビリテーションは、その人の能力を最大限に引き出して、自信をもってもらう場です。そのためには認知症患者という「人」に興味をもち、その人に合ったさまざまなアプローチをしていくことが重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都先端科学大学 健康医療学部 言語聴覚学科 教授 吉村 貴子 先生

京都先端科学大学 健康医療学部 言語聴覚学科 教授 吉村 貴子 先生

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認知神経心理学、認知神経科学、脳機能学

先生が目指すSDGs

メッセージ

言語聴覚士が携わる業務の範囲は幅広く、多職種とも連携してさまざまなことを行います。ですから高校生の時の、勉強だけでなくいろいろな本や映画から得た意外な知識が役に立つこともあります。また言語聴覚士は、その国家資格を取得してからが学びの始まりです。実際に臨床や研究を行うようになって、学びの幅が広がっていくので、一生学び続けられる領域ともいえます。まずは大学で、言語聴覚療法の基本的な知識を身につけて、その後の臨床や研究のヒントにしてもらいたいです。

先生への質問

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本学は世界で活躍する「人財」を育てる5学部10学科の総合大学です。経済経営学部、人文学部、バイオ環境学部、健康医療学部、工学部、それぞれの学部でグローバル化する現代社会を生き抜く「未来を生み出すチカラ」を身につける教育を展開。専門性に加えて、多くの留学生が学ぶ「国際性が日常のキャンパス」で実践的な英語力を磨くとともに、多様性に適応するコミュニケーション能力、デジタル化に対処できるデジタルリテラシーを高めて、激動する社会に向かって自らを築き、世界レベルで活躍できる人材の輩出を目指しています。