糖尿病と運動との密接な関係、今後の発展

糖尿病と運動との密接な関係、今後の発展

糖尿病のタイプは複数存在する

体内のインスリンという物質の働きが悪くなることで血糖値が上昇してしまう糖尿病には、複数のタイプが存在します。95%が、遺伝や生活習慣が発症や進行に大きく影響する2型糖尿病であり、そのほか、膵臓のインスリンを出す細胞が壊されてしまう1型糖尿病などがあります。
2型糖尿病では、血糖をコントロールするために「食事療法」や「運動療法」が効果的であることがわかっており、理学療法士などによって運動療法が行われています。食事療法に比べて、運動療法は患者の継続率が低い傾向があるため、続けやすい方法や効果的な運動法が理学療法士の立場から研究されています。

エビデンスの足りない1型糖尿病

一方、1型糖尿病においては、運動の効果についてはっきりしたデータがまだほとんどありません。1型は薬物療法と食事療法が治療の中心であり、生活の中で血糖値が乱高下しやすいという特徴があるため、運動のおかげで血糖値が下がったのか判断しづらいのです。
ただ、近年の研究では、座ったままでいることが30分以上続くと、血糖コントロールに良くないことがわかってきました。さらに研究が進めば、運動が1型糖尿病にどのように効果があるのか、根拠のあるデータが得られることにつながるでしょう。

診療報酬を得ることの重要性

日本の医療制度では、患者の治療内容を点数化し、医療機関が診療報酬を得ることになっています。2023年現在、「糖尿病患者に対する運動療法」には点数がついておらず、診療報酬を得ることができません。そのためか、多くの病院では運動療法があまり積極的には行われていないのです。
糖尿病と運動の関係が科学的に明らかになっていけば、「糖尿病患者に対する運動療法」が診療報酬を得られるように制度が改定され、その結果、運動療法が多くの病院で行われ、患者に広く行き渡ることが期待されます。

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先生情報 / 大学情報

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 理学療法学専攻 准教授 本田 寛人 先生

四條畷学園大学 リハビリテーション学部 理学療法学専攻 准教授 本田 寛人 先生

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理学療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のあなたは、糖尿病と聞いてもまだピンとこないかもしれません。糖尿病には、1型糖尿病という、生活習慣とは関係なく早ければ幼少期から発症するタイプも存在します。また、肥満をもとにした若年の糖尿病患者も増えています。将来の病気の予防のために、肥満や糖尿病に対する運動・身体活動について、今後の学びの中で吸収してほしいです。もちろん、ダイエットという観点から始まってもかまいません。肥満や糖尿病に関心を持つことで、自分の生活や運動習慣を見つめ直し、将来に向けて健康を考えるきっかけになれば嬉しいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

四條畷学園大学に関心を持ったあなたは

医療技術者(理学療法士・作業療法士・看護師)を養成する大学です。リハビリテーション学部は、学生にとって魅力あるカリキュラム編成と100を超える実習施設が整っており、国家試験合格実績も着実に伸ばしています。また、小規模だからこそ実現できる教員・学生間の親密さが国家試験合格までの懇切丁寧な指導につながっています。看護学部は、取得資格を看護師一本に特化したことによりカリキュラムを充実させました。講義・演習→実習という学修サイクルを形成し、より深い理解につなげ、実践力のある看護師の育成をめざします。