えっ、これとあれが繋がるの? 解析と代数に橋を架ける「岩澤理論」
素因数分解の一意性の崩壊と「類数」
整数の世界では、一つの数はただ一通りの方法で素数の積に分解できます。しかし、-5の平方根 (虚数) のような数を付け加えて整数の世界を拡げると、複数通りの分解方法が存在することがあります。ここで登場するのが「類数」という概念です。類数とは、拡げられた整数の世界で、素因数分解がどれだけ多様な方法でできるかを測る値です。類数が1ならば素因数分解の一意性が保たれているということ、類数が1より大きい場合はそれだけ多様な素因数分解の方法があるということを意味します。
関−ベルヌーイ数と類数
数学において重要な数列の一つに、関−数ベルヌーイがあります。連続した整数をべき乗した値の総和(1ᵏ+2ᵏ+3ᵏ+・・・+nᵏ)を求める「べき乗和の公式」を、一般のkに対して記述するために導入されるのが関−ベルヌーイ数です。0番目の数は1で、以降1/2、1/6、0、-1/30、0、1/42、0、-1/30、……と続いていきます。
関−ベルヌーイ数と類数は、それぞれ解析学、代数学において重要な役割を果たすものですが、両者が何やら密接に関係しているらしいことが、19世紀にクンマーらによって観察されてきました。その関係を明らかにしたのが、1950年代に提唱された「岩澤理論」です。整数の性質を深く探究する「整数論」の一分野である岩澤理論は、別々に発展してきた解析学 (解析的整数論) と代数学 (代数的整数論) の間に密接で美しい関係があることを示し、両者の間に橋を架けたのです。
知の世界の探究こそが数学
整数論の数々の予想には、岩澤理論に関連するものも少なくありません。これらの予想は整数論の基礎を形成するもので、解決されれば数学の進歩を大きく推し進め、全く新しい知の世界をもたらすであろうと期待されます。このように数学の異なる分野が互いに深く影響し合い、新たな発見へとつながることが多々あります。数学は、こうした知識がどのように結びつき、新しい理解へと導くのかを探究する学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
津田塾大学 学芸学部 数学科 准教授 原 隆 先生
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整数論、代数学、数論幾何学先生が目指すSDGs
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