行政をもっと効率的・効果的に! 産声を上げる行政管理会計

行政と企業は似たような考え方で経営できる!
企業の経営を支える「会計」には、財務会計と管理会計の2つがあります。財務会計が企業の資金調達を目的とするのに対し、管理会計は組織の経営をより効率的・効果的にするための手法です。
会計といえば「お金の計算」というイメージがありますが、管理会計は「考え方」を重視します。業務の標準化や従業員の多能化、業務の平準化によって効率性を高め、目的手段関係や因果関係仮説を活用して効果を最大化する管理会計の考え方は、行政の運営にも応用できます。
もっとも、行政の場合は「利益」という指標がないため、効果を測定するのが難しい面があります。そこで「行政管理会計」という新しい研究分野が生まれつつあります。
効率化で数百人分の時間を生む
管理会計の考え方を行政に活用することで、さまざまな業務の効率化が図られています。例えば職員数が3000人超の広島国税局では、管理会計の考え方を用いた業務改善によって、数百人分の時間を生み出すことに成功しました。これは、無駄な動きや重複した確認作業を減らしたり、出張の際に複数の業務を同時に行うことで移動時間を削減したりするなど、小さな改善の積み重ねによって実現したものです。この考え方は例えば学校現場にも応用でき、教員の業務負担を軽減しつつ、生徒と向き合う時間を増やすことも期待できます。
効率的・効果的な行政の実現で社会全体に好影響
行政管理会計の研究は、最終的に国民生活の向上につながります。なぜなら、行政という分野に科学的なアプローチを取り入れることで、限られた予算の中で最大限の効果が発揮され、より透明で効率的な行政運営が実現し、それが住民からの信頼を得ることにつながるからです。現状では、行政の側も市民の側も、効率性や効果性を測る共通言語を持っていません。この研究が進めば、行政と市民のコミュニケーションツールとして機能することにより、無駄のない、信頼される行政の実現に貢献することが期待されます。
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津田塾大学総合政策学部 総合政策学科 教授大西 淳也 先生
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