持続可能でみんなが幸せになれる貿易を実現しよう
Win-Winの貿易のために
貿易では双方に利益の出る関係をめざしますが、輸入国が生産現場の実態を把握しきれていないこともあります。例えば安くていいものを仕入れたとき、その裏では生産者が不当に扱われていたり環境破壊を引き起こしたりしている事例も見られます。
課題解決のためには多国間のルール作りが必要です。その役割の一端を担っているのが世界貿易機関(WTO)ですが、不当な労働の実態を訴えるための委員会や規則はまだ整備されていません。そこで、国際的な非政府組織(NGO)などの団体が環境や生産者などに配慮して作られた生産物に対して認証を行っています。
生産者を可視化する認証
有機JAS認証のコーヒーを生産するブラジル在住者へのインタビュー調査では、認証を受けてから生活の質が向上したことがわかりました。有機JASの認証を受けるためには、農薬や化学肥料を使わずに農産物を作る必要があるので、生産者が農薬を吸い込むリスクが下がり、生活環境や健康状態が改善しました。また、ジェンダー平等を条件にしている認証の場合は、生産者コミュニティの生活水準向上を促進する効果がありました。しかし生産には通常より手間がかかるため、安く買いたたかれてしまうと生産者は生活ができません。認証を受けた商品は、そうでないものに比べて価格が高く設定されますが、生産現場の状況が可視化されるため消費者も安心して商品を手に取ることができます。このように、生産者と消費者双方に利益をもたしうると考えられます。
社会が変われば貿易も変わる
農産物や加工品だけでなく、「廃棄物」や「情報」も貿易品目のひとつです。日本は国内で処理、リサイクルしきれなかった廃プラスチックを海外に輸出しており、環境への影響と共に問題視されています。また、インターネット上でやりとりされるデータやサービスに対する世界的なルールはまだ整備途上です。社会の変化に合わせ、持続可能な貿易を実現するための方法を世界規模で議論することが求められています。
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先生情報 / 大学情報
津田塾大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 新海 尚子 先生
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