概日リズムの停止の謎をバイオイメージングと数学で解く
概日リズムの研究
21世紀の生物学には新しい潮流が起こっています。ある研究を例にそれをご紹介しましょう。
生物が体内に持つ約1日のリズムを「概日リズム」と言います。この周期振動には、真夜中に一定の強さの光に当たると止まるという現象が知られています。それがどのように起きるのかを「バイオイメージング」という技術で調べた研究です。バイオイメージングとは特定の分子などを可視化する技術です。
マウスの細胞を、実験装置に入れ培養します。細胞には概日振動に依存して発光タンパク質が増減するように遺伝子が組み込まれ、光り方でタンパク質の量的な変化がわかるようになっています。この状態で、真夜中のタイミングで調度良い強さの光を当てると、振動の停止が観測されました。細胞の時計が止まってしまったのです。
時計が止まるメカニズム
この場合の「時計が止まる」というのは、針が止まったというより、「針がなくなった」といえる現象です。
生物時計はどこかに1個の時計があるのではなく、時を刻む無数の細胞が脳にも体の末端にも存在し、その総和で一つの時計になっています。その一つひとつの振動が少しだけしかずれていなければ、振動はなくならないのですが、それらがバラバラのリズムだと、それぞれが打ち消し合うため、振動がなくなります。これが「針がなくなる」という状態です。
細胞一つひとつを観察することによって、最初はそろって振動していた細胞が、真夜中の光によりバラバラに振動することが確かめられました。
これは1975年に唱えられた「Clock shop Hypothesis(時計店仮説)」を現代の技術で証明した研究です。
これからの生物学は数学が必須
近年の生物学では、バイオイメージングという技術革新によって以前は得られなかった膨大なデータが得られるようになり、それを解析することが欠かせなくなっています。生物学にも数学や物理学が必要な時代なのです。
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