人を資産として評価する「人的資源会計」で企業が変わる!

人を資産として評価する「人的資源会計」で企業が変わる!

見えない価値を資産化する

企業の資産は「ヒト・モノ・カネ」で評価できると言われています。しかし、従来の会計では数値化できない分野を明確に扱えませんでした。「ヒト」という無形の価値をどう評価すべきかという考えから、1960年代にアメリカではじまったのが「人的資源会計」という取り組みです。公認会計士やMBA(経営学修士)などさまざまな資格や学位、能力を持つ人が企業にいることは強みであり、大きな価値を持ちます。これを会計的にも資産として取り扱うなら、従業員への資本投下は利益を圧迫する費用ではなく、会社の資産として計上できます。人的資源会計では「従業員教育に力を入れることで人的資源の価値が高まり、企業の価値も高まる」という考えが成り立つのです。

数字だけでは表せない価値

人的資源を評価するには、貨幣換算以外にも「ストーリー」という評価方法があります。これは、企業が株主や投資家、取引先などのステークホルダー(利害関係者)に業績を説明する際に、「非財務報告書」として提出するものです。ストーリーには、現在進行中のプロジェクトに必要な人材や、人材獲得と育成のために投下した費用、達成された業績などが起承転結のストーリー形式で記されます。こうした企業内部の取り組みは数字としては見えにくいものですが、ストーリーがあることでその会社のビジョンや戦略、目標が伝わりやすくなり、長期的な成長を見極めるための重要な判断材料にもなります。ただし、ストーリーには公平性と客観性に基づく高い信頼性が必要です。そのためには、第三者による保証などの仕組みも求められます。

公正な評価がつくるウェルネス

企業が働く人を資産と考えてその価値を評価するようになれば、資産である「ヒト」を守ろうという意識が高まり、働き方の改善や福利厚生制度の充実、賃金などの評価にも反映されるでしょう。そして、人的資源会計の導入により、企業の健全な経営が対外的にも評価されれば、働く人や企業、ひいては社会全体にとってのウェルネスにつながると考えられます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 経営学部 会計ガバナンス学科 教授 池田 安生 先生

武蔵野大学 経営学部 会計ガバナンス学科 教授 池田 安生 先生

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会計学、財務会計、人的資源会計

メッセージ

社会では、机上で学んだ知識以上に、多くの矛盾と向き合うことになります。あなたの努力や決断が正当に評価されていないと感じて苦しむこともあるでしょう。私自身も思い悩んだ経験があります。そんなときに頼りになるのが「会計」という考え方です。「何がどれだけ数字に反映されたのか」を論理的に説明することで自分の意見を確立させて、他者に主張できます。社会に出る前に会計を学んで、論理的思考を身につけてください。その知識はあらゆる分野であなたを助けてくれる指針になるでしょう。

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。