スタートアップ企業を育てる環境作り
日本のスタートアップ企業の課題
日本政府の重点政策として、2022年の「骨太方針」に、スタートアップ企業の育成が盛り込まれました。革新的なイノベーションはスタートアップ企業によってのみもたらされることが、漸く認識されるようにはなったものの、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)のような名だたるハイテク企業を輩出したアメリカのシリコンバレーと比べ、日本ではユニコーンと呼ばれる急成長を遂げたスタートアップ企業がはるかに少ないのですが、それはなぜでしょうか?
関連法の整備
かつて日本のベンチャー企業への投資を諦めたアメリカの投資家たちは、その理由として、「日本の法律の未整備」を指摘しました。「会社法にスタートアップ企業への投資を後押しするための制度が欠けており、起業家への動機付けが行えない」と言うのです。2005年に制定された会社法では、アメリカで行われているように、オプション権者が、将来、特定の価格で株式を購入する権利(ストックオプション)を認め、普通株式に比して利益配当および残余財産の分配を優先的に受けることが可能で、かつ新規株式公開(IPO)時に強制的に普通株式に転換される転換条項付優先株式の発行が自由化されました。しばらく時間がかかりましたが、会社法制定後に税法の見直しもなされ、これらの仕組みが活用されるようになり、定着しました。
知財と人の流動化
スタートアップ企業の創出には、大企業に囲い込まれている知的財産や人材が、スタートアップ企業で活用されることが可能となる環境作りも欠かせません。また、企業の新陳代謝を図ることも、スタートアップ企業が生まれるきっかけにつながります。
制度的な制約を除去して、スタートアップ企業が最も必要としている物的資源と人的資源の流動性を高めることによって、スタートアップ企業に携わる人達が強いインセンティブを持ち、努力を続けることが可能となれば、日本のスタートアップ企業が世界的に飛躍する日も遠くないでしょう。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野大学 法学部 法律学科 教授 宍戸 善一 先生
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先生への質問
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