講義No.12837 経済学 法学

スタートアップ企業を育てる環境作り

スタートアップ企業を育てる環境作り

日本のスタートアップ企業の課題

日本政府の重点政策として、2022年の「骨太方針」に、スタートアップ企業の育成が盛り込まれました。革新的なイノベーションはスタートアップ企業によってのみもたらされることが、漸く認識されるようにはなったものの、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)のような名だたるハイテク企業を輩出したアメリカのシリコンバレーと比べ、日本ではユニコーンと呼ばれる急成長を遂げたスタートアップ企業がはるかに少ないのですが、それはなぜでしょうか?

関連法の整備

かつて日本のベンチャー企業への投資を諦めたアメリカの投資家たちは、その理由として、「日本の法律の未整備」を指摘しました。「会社法にスタートアップ企業への投資を後押しするための制度が欠けており、起業家への動機付けが行えない」と言うのです。2005年に制定された会社法では、アメリカで行われているように、オプション権者が、将来、特定の価格で株式を購入する権利(ストックオプション)を認め、普通株式に比して利益配当および残余財産の分配を優先的に受けることが可能で、かつ新規株式公開(IPO)時に強制的に普通株式に転換される転換条項付優先株式の発行が自由化されました。しばらく時間がかかりましたが、会社法制定後に税法の見直しもなされ、これらの仕組みが活用されるようになり、定着しました。

知財と人の流動化

スタートアップ企業の創出には、大企業に囲い込まれている知的財産や人材が、スタートアップ企業で活用されることが可能となる環境作りも欠かせません。また、企業の新陳代謝を図ることも、スタートアップ企業が生まれるきっかけにつながります。
制度的な制約を除去して、スタートアップ企業が最も必要としている物的資源と人的資源の流動性を高めることによって、スタートアップ企業に携わる人達が強いインセンティブを持ち、努力を続けることが可能となれば、日本のスタートアップ企業が世界的に飛躍する日も遠くないでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 法学部 法律学科 教授 宍戸 善一 先生

武蔵野大学 法学部 法律学科 教授 宍戸 善一 先生

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法学、経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

これからは、プレゼン能力と英語でのコミュニケーション能力が重要になります。この二つは、一般に日本人が苦手としてきたものですが、企業への就職を目指す人にとっても、ベンチャー起業家になることを目指す人にとっても、世界を舞台として、取引先や投資家にアピールするためには必須の能力です。是非、大学在学中に意識的にトレーニングしてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。