生きづらさを抱える人に寄り添い働きかけるソーシャルワークの役割
ソーシャルワークの課題
ソーシャルワークとは、さまざまな生活のしづらさ・生きづらさを抱えている人たちが、より良い生活や人生を送れるように、その人や周囲の社会、そしてその接点に働きかける活動のことです。そこには、生きづらさ故にこれ以上生きていけないと考える人も含まれます。日本では自ら命を絶ってしまう人が年間2万人を超え、15歳から39歳の若者の死因の第一位にもなっています。自ら死を選ぶような状況に直面することは、誰にでも起こり得ます。そうした悩みを抱える人たちをいち早く発見し、適切に働きかけることが大切であり、ソーシャルワークにとって大きな課題といえます。また誰もが悩みを発信しやすく、それを受け止められる社会の実現も重要です。
特別なことではない
ソーシャルワーカーや周囲の人がリスクに気づくためには、まずは相手の具体的な意図を確かめることが大切です。ここで「私の一言でもしものことが起こってしまったら」と不安に感じる人も多く、重要な質問を避けることでリスクを見逃してしまうケースが懸念されます。しかし、「これ以上生きていけない」と考える人と向き合うのは、特別なことではありません。生きづらさがある人に寄り添い、ともに問題解決に向かおうというソーシャルワークの姿勢は、誰に対しても共通します。こうした心理的な抵抗を含め、適切な働きかけ方を学べる教育プログラムの整備が急務です。
みんなが命を守るゲートキーパーに
自ら命を絶つリスク因子はさまざまかつ人によって差があり、放置しているとリスクが高まる可能性があります。一方、良い人間関係や生活環境、本人の強み(ストレングス)など、リスクを低減する因子もあります。家族や周囲とつながり、頼ってもよいのだと認識するだけでも、人は孤独感や孤立感から救われることがあります。しかし、精神的に追い詰められると、こころの視野が狭まり、サポートがあっても周囲や状況が見えにくくなります。このため、誰もが「ゲートキーパー」になり、命を救える世の中にしていくことが重要です。
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武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 教授 小高 真美 先生
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