講義No.14775 経営学・商学

病院の利益とは? 患者さんに医療を提供し続けるために必要なもの

病院の利益とは? 患者さんに医療を提供し続けるために必要なもの

病院経営に必要な原価計算

「患者さんのために」「より多くの命を救うために」。医療従事者は、そんな思いで働いています。しかしその思いを実現するには、まず病院の経営が安定し、長期的に維持されていく必要があります。そのためには病院の経営状況を可視化することが重要です。
そこで現在取り組まれているのが、既存の病院データを用いて、患者さん一人にかかる費用の原価計算をおこない、経営に役立てる研究です。この研究が進めば、どこに改善の余地があるか、などをデータから読み取っていけるものと期待されています。

診療内容をより反映させるために

まず、病院の収益のもととなる診療報酬は、その制度により価格が決められています。つまり、患者さんにかかる費用が、診療報酬でまかなわれているか、病院は知る必要があります。これまで、患者さん一人にかかる費用は把握が困難で、患者数などの平均値で求められていました。しかし前述の研究では、電子カルテや手術記録を活用し、実際にかかった時間などを用いて計算しています。例えば医療従事者の人件費を按分する場合、患者数よりも患者さんごとに異なる手術時間を用いるほうが、診療内容をより反映させた費用になるのではないか、という考えです。
これにより、既存の病院データを活用することで、病院経営に有益な情報をもたらすと期待されます。

安心安全な医療を提供するために

現時点では、ある手術を対象とした原価計算の方法論が研究されていますが、将来的には複数診療科での適用も検討されています。重要なことは、既存の病院データを活用することで、診療内容を反映させ、かつ手間をかけない計算方法にすることです。
医療従事者間でこの情報を共有することで、さらなる改善につながることが期待されています。病院経営を継続するためには、適切な利益を確保し、医療従事者や病院施設などを維持しなければなりません。つまり原価計算は、経営を可視化し、安心安全でより質の高い医療を患者さんに提供するために必要なツールであるということです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

熊本学園大学 商学部 商学科 准教授 水野 真実 先生

熊本学園大学商学部 商学科 准教授水野 真実 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

会計学

先生が目指すSDGs

メッセージ

何にでも興味や関心を持ってみることをお勧めします。例えば動画を見るのが好きなら、見て「楽しい」だけでなく、どうやって作られているのか、収益形態は、公開ペースと閲覧者数の関係は、など多角的視点から観察してみるのです。そのときに適した知識があれば、それはもっと「楽しいこと」になるでしょう。楽しさを生む知識を身につけるのが大学です。その知識をもとにさらに思考を深めていくために、まずは今のうちに継続して向き合える、自分の好きなこと、興味あることをたくさん見つけ出してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

熊本学園大学に関心を持ったあなたは

熊本学園大学は、創立80年超の伝統、9万8千人超の卒業生を輩出し、4学部11学科、大学院5研究科を擁する文系総合大学です。商・経済・外国語・社会福祉の専門分野教育はもちろん、学修・就職支援や、特待生、奨学金、留学制度などで学生生活をサポートしています。皆さんの夢をカタチにするため、幅広い「教養」と高度な「専門」知識の修得を柱に、多様な人々と協力しながら地域や世界の課題に取り組むことができる人材を育成することに努めています。