病院の利益とは? 患者さんに医療を提供し続けるために必要なもの

病院経営に必要な原価計算
「患者さんのために」「より多くの命を救うために」。医療従事者は、そんな思いで働いています。しかしその思いを実現するには、まず病院の経営が安定し、長期的に維持されていく必要があります。そのためには病院の経営状況を可視化することが重要です。
そこで現在取り組まれているのが、既存の病院データを用いて、患者さん一人にかかる費用の原価計算をおこない、経営に役立てる研究です。この研究が進めば、どこに改善の余地があるか、などをデータから読み取っていけるものと期待されています。
診療内容をより反映させるために
まず、病院の収益のもととなる診療報酬は、その制度により価格が決められています。つまり、患者さんにかかる費用が、診療報酬でまかなわれているか、病院は知る必要があります。これまで、患者さん一人にかかる費用は把握が困難で、患者数などの平均値で求められていました。しかし前述の研究では、電子カルテや手術記録を活用し、実際にかかった時間などを用いて計算しています。例えば医療従事者の人件費を按分する場合、患者数よりも患者さんごとに異なる手術時間を用いるほうが、診療内容をより反映させた費用になるのではないか、という考えです。
これにより、既存の病院データを活用することで、病院経営に有益な情報をもたらすと期待されます。
安心安全な医療を提供するために
現時点では、ある手術を対象とした原価計算の方法論が研究されていますが、将来的には複数診療科での適用も検討されています。重要なことは、既存の病院データを活用することで、診療内容を反映させ、かつ手間をかけない計算方法にすることです。
医療従事者間でこの情報を共有することで、さらなる改善につながることが期待されています。病院経営を継続するためには、適切な利益を確保し、医療従事者や病院施設などを維持しなければなりません。つまり原価計算は、経営を可視化し、安心安全でより質の高い医療を患者さんに提供するために必要なツールであるということです。
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熊本学園大学商学部 商学科 准教授水野 真実 先生
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