講義No.15239 経営学・商学

若者の離職を防ぐには

若者の離職を防ぐには

若者の離職状況

厚生労働省の2024年10月の公表データによれば、新規学卒者の3年以内の離職率は、高卒で38.4%、大卒で34.9%と3割を超えています。若者にとって、入社後数年という初期キャリアの時期に職業能力を身に付けることはとても重要であるため、不本意な早期離職は避けたいものです。また、企業は採用の際に、採用や育成にコストをかけています。早期離職は、そのようなコストの未回収や、組織で働くほかの社員のモチベーションの低下や翌年の採用活動への影響など、企業にもネガティブな影響をもたらします。

「リアリティ・ショック」とは

若者の早期離職の主な要因に「リアリティ・ショック」があります。リアリティ・ショックとは、入社前に描いていた仕事や職場などに関する期待(イメージ)と、実際に働き始めて直面する現実とのギャップのことです。ギャップを感じる対象は、業務の負担や人間関係、成長の実感が得られないことなどさまざまです。こうしたギャップが早期離職の引き金になるため、これにどう向き合うかの研究が進んでいます。従来の経営学では「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」という手法が有効とされてきました。社員の採用時に、仕事や組織の良い面だけでなく悪い面も包み隠さずに伝えることで、過剰な期待を抑制し、リアリティ・ショックそのものを小さくしようという考え方です。しかし、人手不足で採用そのものに苦労する企業において、あえてネガティブな情報を積極的に伝えるのは簡単ではありません。

私生活の充実がカギ?

そこで注目されたのが「私生活満足感」という観点です。調査の結果、私生活満足感が高いと感じる人ほど、リアリティ・ショックを感じても離職につながりにくいことが統計的に明らかになりました。これまでは、リアリティ・ショック自体をいかに小さくするのかという点が重視されていましたが、誰しもある程度のリアリティ・ショックを感じ悩むという現実を踏まえた新たな組織的支援としてワーク・ライフ・バランスが注目されています。

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公立鳥取環境大学 経営学部 経営学科 准教授 中島 智子 先生

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