吸収したCO₂がお金に? 森林クレジットで地球温暖化を緩和

吸収したCO₂がお金に? 森林クレジットで地球温暖化を緩和

CO₂がお金になる?

温室効果ガス削減の一環として、森林のCO₂吸収量にお金の価値を与える「森林クレジット」という仕組みが生まれました。森林クレジットは、森林の樹木が吸収したCO₂の量に応じて与えられます。森林の所有者はこの森林クレジットを売ることが可能です。売却資金を使って森林を手入れすれば、状態のいい樹木が増えてCO₂吸収量がさらに上がります。
森林クレジットの主な買い手は企業です。企業もCO₂を削減しようと努力していますが、ゼロにすることは現実的ではありません。そこで森林のCO₂吸収量と自社が排出したCO₂を相殺して、CO₂排出量を実質ゼロに近づけようとするカーボンオフセットの考え方があります。

CO₂吸収量の赤字を防ぐ

森林クレジットがあるとはいえ、「CO₂をたくさん排出してもいい」というわけではありません。CO₂の吸収量と排出量のバランスを考えて、なるべく排出量が上回らないような行動をとる必要があるのです。もし支出が収入を上回って赤字になっているとわかると、多くの人は節約をするでしょう。森林クレジットも同様で、収支の計算をきちんと行ってCO₂の現状を可視化することで、CO₂排出量の赤字を防ごうとしているのです。これをカーボンアカウンティングといいます。

家庭の協力の重要性

日本のCO₂排出源の3分の1は家庭です。残りの3分の2である産業や輸送業界では有効な対策をやり尽くしており、より排出量を抑えるには家庭の協力が欠かせません。森林のCO₂吸収量をお金のように可視化できる森林クレジットは、消費者の行動を変える指標にもなりえます。「なるべくCO₂を出さない方を選ぼう」と判断しやすくなるからです。森林クレジットの考え方を効果的に伝えて、環境に優しい選択ができる消費者を増やすことが求められています。CO₂排出量が吸収量を超えないようにしよう、と人々が考えられるようになれば、家庭でのCO₂削減がさらに進み、カーボンニュートラルに近づくはずです。

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久留米大学 文学部 情報社会学科 教授 梶原 晃 先生

久留米大学 文学部 情報社会学科 教授 梶原 晃 先生

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森林学、会計学

先生が目指すSDGs

メッセージ

現代社会の問題は複雑化しているので、「この分野だけ学んでおけばよい」ということはありません。例えば持続可能な社会づくりは、ひとつの分野だけでは実現が難しいものです。しかし裏を返せば、アプローチの方法が山ほどあるということです。今回紹介した森林クレジットも理系の森林学と文系の会計学の両面から追究できるテーマです。ですから、高校生のうちはまだあまり分野を絞らずに、好奇心を持って広く学んでみましょう。さまざまな分野で得た知識や経験はあなたの糧になりますし、将来の社会課題の解決の際に大いに役立ちますよ。

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