まだまだ未知の領域が残っている、遺伝子の研究

まだまだ未知の領域が残っている、遺伝子の研究

「染色体」「DNA」「遺伝子」とは?

生物の身体を構成する細胞は、中心の細胞核に「染色体」という構造体を持っています。染色体には長い二重らせん構造を持つ「DNA(デオキシリボ核酸)」という物質が格納されており、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基配列によって、生物の身体を形作るタンパク質に必要なアミノ酸の配列を決める「遺伝子」となっています。たとえるなら、DNAは紙やペンなど文章を書くための道具で、遺伝子はA、G、C、Tの4種類の文字で記録された生物の身体の設計図と言うことができるでしょう。

DNAが細胞の活動に使われる仕組み

人間の遺伝子は、約30億文字分の塩基配列によって構成されていて、これら全部の配列を「ゲノム」と呼びます。人間の身体を構成する約90兆個の細胞はすべて同じゲノムを持っていますが、その中でどの部分が用いられるのかは、細胞によって異なります。
1つの細胞の中にある二重らせん構造のDNAを伸ばすと2メートルもの長さになりますが、DNAはヒストンというタンパク質の周囲に絡み付いてクロマチンと呼ばれる構造体を成すことで、100万分の1の大きさまでコンパクトになって収納されています。クロマチンに絡み付いている部分のDNAは普段は動作しておらず、そこからほどけている部分にポリメラーゼという酵素が近づいて情報を読み取ることで、それぞれの細胞に必要な活動が個別に行われる仕組みになっています。

設計図として意味を持つ遺伝子は2%?

人間のゲノムを解析すると、約30億文字分の遺伝子のうち、人間の身体の設計図として意味を持っているのは2%に過ぎないことが明らかになっています。しかし最近の研究では、それ以外のDNA(非コードDNA)にも、生物の活動を維持するための何らかの役割があるのではないかと推測されています。生命科学の分野には、未知の領域がまだまだ残されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 理学部 化学科 教授 廣田 耕志 先生

東京都立大学 理学部 化学科 教授 廣田 耕志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生命科学

メッセージ

大学に入ると、あなたはいろいろなことに興味を持つようになると思います。その中で、一つでもいいので、真剣に、夢中になって取り組むものを作ってください。私は今の生命科学の分野の研究に携わるようになってから、17年間、夢中で走り続けてきましたが、こんな素晴らしい経験はほかにないと思えるほど、楽しかったです。もし、私たちの研究に興味を持ってもらえるようなら、ぜひ研究室に来てください。一緒に研究しましょう。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。