快適生活を支える「冷凍空調技術」の最前線
生活を支える冷凍空調技術
冷凍空調技術は、住宅やビルの空調、食品の貯蔵・加工、医療、工業プロセスなど、私たちの生活に欠かせません。冷凍サイクルでは冷媒が蒸発することで冷たい温度を得ていますが、蒸発した冷媒は圧縮され放熱して液体に戻され、再利用されます。この循環を実現するために、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を備えています。これらの機器と、その中を循環する冷媒、そして機器の信頼性を確保するために使用される潤滑油等との相互作用が技術開発の要です。
冷媒と油の振る舞いを解明する
冷媒圧縮機内の潤滑や性能向上のために、冷媒と相溶性を持つ潤滑油が使われています。冷媒が油に溶け込む程度が適切でなければ、潤滑不良や効率低下などの問題が生じるため、冷媒と油の相性がとても重要です。
油と冷媒の相互作用は非常に複雑で、温度や圧力の変化によってさまざまな現象が起こります。泡が発生して油の粘度が変化することもあり、性能低下や故障につながることもあります。そこで、冷媒が溶け込んだ油の振る舞いを解明する研究が行われています。例えば、冷媒が溶け込んだ油の表面張力が測定され、圧縮機内の泡の発生や油のミストの発生の検討に使用されています。また、表面張力から冷媒溶解度を測るセンサの開発も進められています。
環境課題の解決をめざして
夏の家庭用エネルギーの3/4がエアコンや冷蔵庫などの冷凍空調機器で消費されており、省エネルギーや地球温暖化係数の小さな冷媒の使用が求められるなど、環境面での課題が顕在化しています。後者については、家庭用冷蔵庫では既に可燃性のガスが冷媒として使用されています。しかし、エアコンなど大型の機器での使用にはまだ課題があります。そこで、新しい冷媒に適した潤滑油の研究や、可燃性冷媒を安全に使用するための技術開発が行われています。これらの研究は、環境に配慮しつつ効率的な冷凍空調システムの実現に欠かせません。私たちの快適な生活を支える冷凍空調技術は、こうした地道な研究によって日々進化を続けているのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 工学部 機械工学科 教授 福田 充宏 先生
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流体工学、熱工学、トライポロジー先生が目指すSDGs
先生への質問
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