病気診断から再生医療まで、工学+医学=可能性無限大
手のひらサイズの装置で、病気の検査が可能に
痛みもなく短時間で終わり、結果もすぐにわかる検査方法があれば、病院での検査が楽になります。現在、マイクロ・ナノテクノロジーによって作られたマイクロデバイスを活用し、1~2滴の血液で健康診断やがん検診を行う研究が進んでいます。基盤技術が確立されれば、タブレットのような手のひらサイズの装置で、さまざまな検査がスピーディーに行えるようになるでしょう。
ミクロの世界ならではの現象を活用
中学校の理科や高校の物理で、「表面張力」と「毛管(毛細管)現象」について学んだと思います。血液は、赤血球や白血球などの細胞成分と、血漿(けっしょう)という液体成分とで構成されており、それぞれ比重が異なるので、マイクロデバイス上に作った毛細管状の「水路」で容易に分離できます。
血漿は水とたんぱく質でできているので、細胞成分と分離してたんぱく質を調べれば、いろいろな病気の原因であるたんぱく質の異常を検知できるわけです。特に「がん」は、特定のたんぱく質の異常を見つければ早期発見できることがわかっており、異常たんぱく質だけを分離させて探す研究も進んでいます。
1つの細胞を押したり引っ張ったりできるロボット
「幹細胞」は、自己複製だけでなく、別の種類の細胞に分化する能力も持っています。そのプロセスが解明できれば、再生医療は飛躍的に進歩するでしょう。そこで、1つの細胞に機械的な刺激を加えられる構造のマイクロロボットを製作し、細胞を圧迫したり引っ張ったり、細胞の周囲に特定のたんぱく質を与えるなどの実験が始まりました。幹細胞に物理的な力を加えると、ある種のたんぱく質が発現することがわかっており、これが、細胞分裂や細胞分化にどのように関わっているのか、また、どのような条件下で別の細胞に分化するのかを解明しようというわけです。研究が進めば、自分の細胞を使って移植用臓器を作る、夢のような再生医療が実現するかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 機械数理工学科 准教授 中島 雄太 先生
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