水道が危ない! 健全な水循環を保つには?
老朽化に直面する上下水道システム
水は私たちの生活に欠かせないものであり、水循環をいかに健全に保つかは社会の重要な課題です。現在の日本の上下水道システムは、広域の上下水を大きな浄水場・下水処理場で処理する「大規模集約型」で、高度成長期に一斉に整備されました。そのため全国的に老朽化が進行しており、最近頻繁に報じられる水道管の破裂事故はその現れです。だからといって、全国の上下水道の一斉更新は非現実的です。予算だけではなく、技術者が減っているという問題もあります。このままでは、近い将来に行き詰ることが懸念されます。
小規模分散型水循環システム
この問題を解決するためには、都市圏以外では「小規模分散型の水循環システム」を導入して、ゆくゆくは家庭単位での水循環を行うことも考えなくてはなりません。そもそも、現在でも大規模集積型システムに適さない地域もあります。例えば、高低差が大きい長野県では、ふもとの浄水場から揚水ポンプで水道水を供給しないといけない地域があります。小規模分散型の水循環システムによって地域内で循環することが実現できれば、効率的な水供給を実現できるようになるでしょう。また、一部の地域で利用されている農業集落排水施設などを活用すれば、少ない初期投資で同システムを運用することも可能です。なお、現行の大規模集約型システムに対しても、より安全に水供給ができるようにするための研究が進んでいます。
水質基準の策定などの課題も
小規模分散型システムを実現するためには、小型化だけではなく、省エネ化、メンテナンスフリーとなるスマート化が必要です。実現までの技術的な課題は多々ありますが、革新的な水処理膜などさまざまな要素技術の開発は進んでおり、それらを活用してシステムとして実現することが期待されます。
また、小規模分散型水循環システムの社会実装のためには、新たな水質基準の策定やリスクコミュニケーションなどの施策も欠かせません。多方面からの取り組みが必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 工学部 水環境・土木工学科 教授 小松 一弘 先生
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