森を知り、人を知る 持続可能な森林経営の実現をめざして
森の時間的・空間的なデザイン
木材以外にも森林は、生物多様性の保全、二酸化炭素の吸収、水源涵養(かんよう)、レクリエーションなど、さまざまな生態系サービスを人間社会に提供しています。森林計画学は、持続可能な森林経営の達成とさまざまな生態系サービスの維持を目的に、どこにどのような種類の森を配置するかを「空間的」に、また木材をいつ・どの程度収穫するかを「時間的」にデザインするための学問です。
現状を把握して未来を予測
森の現状把握のために、航空機や人工衛星などリモートセンシングといった上空からの調査と、森の中に入って行うフィールド調査を行います。森のデザインを進めるにあたっては、このデータを基にどのスケールで考えるかが重要です。一つの森の中での天然林・人工林の配置のほか、地域単位、国単位での保全エリアの設定などのスケールがあります。日本では保安林や国立公園などが保全エリアになっています。
時間的なデザインのためには、数理・統計モデルを使って森の将来を予測します。まず、樹木の成長を予測して、次にそれらを伐採した場合の影響評価を行います。収穫により得られる利益と、生物多様性や水源涵養機能への影響などをシミュレーションで予測するのです。
森を知り、人を知る
2000年の前後で、ミャンマーの森林の木々が大幅に減少して大きく劣化しました。10年近い調査の結果、違法伐採の影響が大きいことがわかり、2016年に1年間の伐採禁止令が出されています。当初は象を使った伝統的な林業のやり方が原因として疑われましたが、調査結果から、それは環境への負荷が小さく、持続可能な方法だと明らかになりました。実際の原因は、伐採のために作った道を使って違法伐採が行われることにあったのです。同様の問題は世界各地で生じており、伐採終了後に道を壊すことを義務付けている国もあります。
このように、森と人の関係は、その土地の社会や文化と深く関わっています。そのためにも、森林計画学では人文社会学的なアプローチも欠かせません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。