「関数解析」は無限を扱う学問
微分積分をメインとする関数解析
数学の研究は大きく3つの分野に分けられます。方程式を扱う代数、図形を扱う幾何、そして関数を扱うのが解析です。解析学にはさらに2つの分野があり、複素関数論、実解析という異なる方向性を持つ学問によって成り立っています。実解析の中にある関数解析は、最適化理論、ゲーム理論、確率論などのもとになる学問です。この研究は関数や数列の集合を扱うため、つまり無限次元の空間を扱います。よって、関数解析は無限を扱う学問とも呼ばれます。
正方形の対角線の長さをどう考える?
ひとつの例として、一辺が1の正方形における対角線の長さを考えます。右上の頂点をA、左上の頂点をB、左下の頂点をC、右下の頂点をDとすると、Bを経由する折れ線A-Cの長さは1+1=2となります。次にBを経由せずにそれぞれの辺を2等分する位置で折れ曲がった折れ線を考えます。このときも長さは0.5+0.5+0.5+0.5=2で変わりません。これを同様にさらに細かく刻んで繰り返します。無限に繰り返したとき、見た目上はA-C間を結ぶ対角線に近づきます。では、その長さは2でしょうか、それとも√2でしょうか?
関数解析に必要な「無限」の概念
長さという意味での解はもちろん√2です。では、この折れ線と、対角線を関数グラフとして考えましょう。このとき折れ線は対角線に見た目の上では近づいていると言えます。しかし、長さが近づいているとは言えません。これは関数のグラフにおいて見た目が近づくことと長さが近づくことは全く別であることの代表的な例です。長さの解である√2になるためには、ある別の条件を満たした近づき方でなければなりません。このように、関数の近づき方には複数存在し、それが、無限次元空間の特徴でもあります。長さに関する不思議な現象はアリストテレスやガリレオも気がついていました。これらは古くから研究されていますが、20世紀になり無限を扱うことができるようになり、数学的に解明できるようになったのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手大学 教育学部 数学教育科 教授 本田 卓 先生
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数学、解析学先生への質問
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