講義No.14032 獣医学

ペットが長生きになって変化する獣医の仕事

ペットが長生きになって変化する獣医の仕事

ペットを家族のように考える

犬や猫といった動物を、自分の子どもやきょうだいのように愛する人は多いでしょう。単なるペットと飼い主という関係性を超えて、動物を家族のように接することを「コンパニオンアニマル」と呼びます。こういった考え方は最近当たり前になってきましたが、数十年前はあまり浸透していませんでした。例えば、今でこそ猫は室内で飼うのが当たり前ですが、昔は放し飼いすることも珍しくありませんでした。また、今のように何度も動物病院に通って治療するという人は少なく、一度診察をしたら終わり、という人が大半でした。

医療の進歩で伸びた犬の寿命

かつては「フィラリア」という病が原因で早くに亡くなる犬が多かったのですが、予防薬ができて寿命が伸びました。このように、医療の進歩により、ペットと過ごす時間も増えたことも理由の一つといえるでしょう。コンパニオンアニマルの考えが浸透するに従って、動物病院や獣医師の数も増加しました。
30年ほど前は動物の腫瘍治療や放射線治療のニーズも少なかったですが、ペットの高齢化によりニーズが高まっています。また、ペットの治療や手術は人間の後追いという考え方もあります。人間に対する治療や機械を適用することで、動物にかかる負担をより軽減した治療が行えるのです。

飼い主との話し合いも獣医師の仕事

ペットの高齢化や獣医学の進化にともない、人間と同じような治療を求める飼い主は年々増えています。獣医師の場合、治療する患者はペットですが、治療にあたっての話し合いをする相手は飼い主です。例えば腫瘍ができた犬を治療する場合、腫瘍の状態と犬の健康状態に加え、飼い主が対応可能な通院回数や経済状況など、配慮しなければならないことがたくさんあります。また、同じ家族であっても夫婦で意見が食い違うケースもあります。獣医師の仕事は治療だけでなく、飼い主が納得するように話し合いを重ね、良い結論に着地させることも含まれるのです。

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先生情報 / 大学情報

麻布大学 獣医学部 獣医学科 准教授 圓尾 拓也 先生

麻布大学 獣医学部 獣医学科 准教授 圓尾 拓也 先生

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獣医学

メッセージ

獣医師の仕事はどちらかというと「人が好き」な人が向いているかもしれません。犬や猫などを扱う仕事ですが、治療時にコミュニケーションを取り、治療方針などの話し合いをする相手はやはり飼い主さんです。実際に、獣医師として独立している人や活躍している人は、人との会話が好きで、好かれやすいタイプが多いです。実はこの仕事も接客業の一つなのです。なので、アルバイトでは接客業などにチャレンジして、人との関わり方やコミュニケーション能力を磨いてみることをおすすめします。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

麻布大学に関心を持ったあなたは

はじまりは1890年に開設した東京獣医講習所でした。
まだ栄養状態が豊かでなかったこの国の、人の生活を豊かにするため、畜産の発展に寄与するため獣医師の養成をはじめました。それから約130年の時を経て、人の社会と動物のかかわりは深くなり、複雑になり、生きものすべてが新しいバランスで循環する「いのちのあしたのあり方」が求められています。
これが私たちの目指す「地球共生系」です。
最先端の研究と確かな実践力で、「人と動物と環境」に向き合い、地球のあしたをつくる。これが私たち麻布大学です。