体外受精でエリート牛の子供を増産!
動物生産とSDGs
畜産物は高品質の食品であり、ヒトの健康や成長に欠かせないものです。近年、新興国の経済発展に伴い、畜産物の需要が急増しています。それに伴い、家畜の飼養頭数も増加しており、多くの資源(穀物、土地、水など)がそれに費やされています。加えて、牛などの反芻動物はその成長過程で大量の温室効果ガスを排出することも知られています。したがって、持続可能な家畜生産のためには、必要な量を低コストで生産することが重要です。本講義では、動物繁殖学がこの課題に対してどのような貢献ができるかについて解説します。
エリート牛の遺伝子を活用する体外受精
現在、日本国内の牛の繁殖は約95%が人工受精によって行われています。人工授精では「エリート雄牛」の精子を活用できますが、「エリート雌牛」の卵子は十分には活用できません。そこで、エリート雌牛の卵子も有効活用できる繁殖技術として体外受精の研究が活発に行われきました。体外受精では、エリート牛の卵子と精子を掛け合わせてできた受精卵を代理母牛へ移植し、妊娠・出産させます。そのため、エリート雌牛は自ら妊娠・出産することなく、繰り返し卵子を提供することができます。これにより、両親から優秀な遺伝子を引き継いだエリート子牛を短期間で増産することが可能となります。
体外受精卵の品質を向上させる
体外受精では、一般的に凍結保存した受精卵を代理母牛の発情タイミングに合わせて移植します。しかし、体外で人工的に受精させた受精卵は、母胎とは異なる環境によってストレスを受け、さらに凍結によるダメージから品質が低下します。そのため、人工授精と比較すると妊娠率が低いという欠点があります。その対策として、薬剤や抗酸化物質によるストレス軽減法が研究されています。また、受精卵の細胞分裂パターンなどから品質の高い受精卵を事前に選別することを目的とした研究も行われています。このように体外受精が人工授精にとって代わる技術となるためには、体外受精卵の品質をいかに向上させるかが鍵となっています。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 農学部 生物資源科学科 生物科学コース 准教授 山中 賢一 先生
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先生への質問
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