新薬開発で不可欠な実験動物の実態と痛み軽減の方策とは

新薬開発で不可欠な実験動物の実態と痛み軽減の方策とは

新薬を作るのに欠かせない実験動物

薬や健康食品で求められることは、適切な効能と安全性です。製薬会社は、想定される効能がきちんと得られるのか、本当に安全なのか、副作用がないのかなどを調べる必要があります。そのため市販する前に、まず動物に投与して安全性を確認後、同意書のもと人間での試験を経て、問題がなければ、国などの審査を経て、薬局や病院などで使用されます。現在は、ほぼすべての国で人間での試験投与の前に、動物実験を義務付けており、実験用の動物はなくてはならないものになっています。

実験に適した動物はマウスやラット

こうした動物実験で求められることは、再現性です。どの個体に投与しても、同じ条件であれば、同一もしくは同一に近い結果がでることが求められます。また、遺伝子的に安定していることや微生物学的にみて、病気を持っていないことも重要です。さらに繁殖がしやすいことやエサやスペースの問題から大きすぎない動物が好まれ、マウスやラット(マウスの10倍ほどの大きさがあるネズミ)などが使われています。

実験動物の苦痛をできるだけ減らす

動物実験だから、ひどい扱いをされているのではないかと思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。痛みを極力抑えるように配慮しており、切開など手術を行う際は、麻酔を使いますし、何度も薬液を投与しなければならない場合などは、カニューレと呼ばれるパイプ状の器具を付け、注射針を刺さなくても大丈夫なようにするなどの措置がとられています。
こうした流れの背景には、動物愛護法という法律があります。この法律の中に、「Replacement(できるだけ生物以外に置き換える)」「Reduction(動物を使うのは、できるだけ減らす)」「Refinement(技術の洗練をし、苦痛を軽減する)」という実験動物学における「3R」の考え方が記載されています。新薬開発には動物への負担が避けられませんが、最大限の配慮が行われているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 動物科学科 実験動物学 教授 藤平 篤志 先生

日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 動物科学科 実験動物学 教授 藤平 篤志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

実験動物学

メッセージ

日本獣医生命科学大学の動物科学科では、畜産に関わる牛や鶏から、ラットやマウスなどの実験動物まで幅広く学んでもらいます。食生活の豊かさは家畜のおかげであり、医薬品の開発には実験動物が不可欠です。私の専門である実験動物学はできる限り動物に負荷をかけない実験方法を考え、各分野の研究者に伝えることが学問としての使命です。実験動物学では、生命倫理について考察することも多く、文系的な感覚も必要となります。文系志向の高校生も生命に興味があれば挑戦できますので、チャレンジしてほしいと思います。

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本学は、明治14(1881)年に東京都文京区にある護国寺の一隅で開学して以来、生命科学系の最高学府として140年の歴史があります。
獣医学部(獣医学科・獣医保健看護学科)と応用生命科学部(動物科学科・食品科学科)の2学部4学科を置き、高度獣医療への対応、生物多様性の保全、食資源となる産業動物の生産、産業動物飼育環境の整備、食品の安全性の確保などの社会的ニーズに応えていける「生命・環境・食」のスペシャリストを育成しています。