乳牛の健康と繁殖の課題を全国のデータ分析で解決へ
牧草が牛の健康とお乳の質に影響する
北海道の酪農家は、平均で130頭の乳牛を飼育しており、「病気を予防して健康を維持する」「必要なときに妊娠・出産する」ための計画を農場ごとに立てています。「牛の健康維持」には、与える牧草の質が特に大きく影響します。食べる餌によって、お乳の脂肪分やたんぱく質も増減します。一般的に、北海道の酪農家は牧草を自農場で作っていますが、本州では海外から輸入することも多いです。
乳牛の健康と繁殖を獣医師がサポート
乳牛は出産しないとお乳を出さないので、農場で安定的に牛乳を生産するためには効率的に妊娠・出産させることがとても重要です。乳牛のメスは、1回目のお産を2歳で迎え、400~430日間隔で、平均3.3回の出産をします。新しい牛を入れるのは農場にとって経済的負担が大きいので、できるだけ長く健康を維持して飼育することが大切になります。こうした健康管理と繁殖管理を、「管理獣医師」と呼ばれる獣医師が農場を回ってサポートしています。そして、普段は管理獣医師が問題の原因を見つけて対処します。
求められる全国全頭のデータベース
しかし、問題の原因が明らかにならない場合や解決できないケースでは、動物の飼育環境や管理の方法に問題がないかを分析します。ここで威力を発揮するのが、牛のデータベースです。日本では、牛の健康状態や妊娠・出産状況、病気、餌、お乳などのデータは農場を支える団体ごとに保有していることが多く、全国規模のデータベースがまだありません。
全国の農場のデータを一元管理することで、地域ごとの特性や課題などが明らかになり、管理獣医師や農場に有益な情報が提供できます。それにはデータ自体も、使いやすいものに整えることが重要です。この全国・全乳用牛のデータベースが稼働することで、日本の酪農はデータの裏付けをもって問題解決を図る、次のステージへと進化を遂げることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 教授 中田 健 先生
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