講義No.09236 食物・栄養学

おいしく食べてもらうことで、回復力を高める栄養療法を学ぶ

おいしく食べてもらうことで、回復力を高める栄養療法を学ぶ

健康を維持するために栄養バランスに配慮する

人間は、食物から栄養を摂取しなければ生きていけません。エネルギーだけでなく、ビタミンやミネラルなど、各種の栄養素を適正に摂取していかなければ、身体の良い状態を維持できなくなります。
人間には、身体の異常を自分で治す能力が備わっていますが、その源になるのは食物から得られる栄養です。必要な栄養素が不足していると、身体の回復力が悪くなる恐れがあるのです。

患者さんに合わせた「栄養療法」を学ぶ臨床栄養学

体力が低下している高齢者や病気の人などは特に、必要な栄養を十分に摂取しなければなりません。そこで、入院患者さん一人ひとりの病態を把握しながら栄養状態を評価し、その人に応じた「栄養治療」の計画を立てて実施していくことも「臨床栄養学」の1つです。
対象者の中には、脳血管障がいの後遺症や認知機能障がい、口腔や気管の障がい、手術などが原因で、食べ物を噛んで飲み込む動作がうまくできない「咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)障がい」の患者さんもいます。そのため臨床栄養学では、栄養素の働きや消化・吸収・代謝などの知識に加え、障がいの程度に応じて食形態を調整する技術も学びます。

おいしく食べることで生きる気力が湧く

私たちは、おいしいものを食べると、力が湧いてくるような気分になります。食事は、単に栄養を補給するだけではなく、生きる気力や喜びを生み出すものでもあります。
昔の病院食は、咀嚼・嚥下障がいの患者さんに対して見た目のよくないものもありました。しかし、臨床栄養学や調理学、食品学の進歩によって、加圧調理法や冷凍調理法、たんぱく質分解酵素などを駆使した、見かけも味もよく、栄養バランスも整っていて、噛まなくても飲み込める「嚥下調整食」の開発が進んでいます。食事を楽しみながら栄養を摂取できる嚥下調整食は、医薬品のような即効性はないものの、確実かつ着実に入院患者さんの回復力を高める治療補助の1つなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

広島修道大学 健康科学部 健康栄養学科 教授 栢下 淳子 先生

広島修道大学 健康科学部 健康栄養学科 教授 栢下 淳子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

臨床栄養学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは「食べる」ことは好きですか。身体の状態によっておいしく感じる時とそうでない時の変化について、疑問を感じたり理由を調べたりしたことはありますか。
医療機関で、患者さんのための栄養治療を行う技術を研究するのが「臨床栄養学」です。もしもあなたが、「医師や薬剤師になりたいわけではないけど、人々の命を守る食の医療専門職に憧れる」と考えているのなら、ピッタリの学問分野と言えます。患者さんとの会話の中から、さまざまなヒントを見つける仕事でもありますから、文系科目が得意な人にも向いているでしょう。

先生への質問

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「個」を育み、伸ばす。それは、約290年前、本学の前身・浅野藩の藩校「講学所」の時代から受け継がれる教育理念です。
広島修道大学では平成22年度「大学生の就業力育成支援事業」に選定されるなど、学部での学びはもちろんのこと、学生一人ひとりの自己実現をバックアップするさまざまな取り組みを行っています。
合い言葉は「すべてを学びのもとに」。教職員が一体となってあなたの可能性を応援します。