おいしく食べてもらうことで、回復力を高める栄養療法を学ぶ
健康を維持するために栄養バランスに配慮する
人間は、食物から栄養を摂取しなければ生きていけません。エネルギーだけでなく、ビタミンやミネラルなど、各種の栄養素を適正に摂取していかなければ、身体の良い状態を維持できなくなります。
人間には、身体の異常を自分で治す能力が備わっていますが、その源になるのは食物から得られる栄養です。必要な栄養素が不足していると、身体の回復力が悪くなる恐れがあるのです。
患者さんに合わせた「栄養療法」を学ぶ臨床栄養学
体力が低下している高齢者や病気の人などは特に、必要な栄養を十分に摂取しなければなりません。そこで、入院患者さん一人ひとりの病態を把握しながら栄養状態を評価し、その人に応じた「栄養治療」の計画を立てて実施していくことも「臨床栄養学」の1つです。
対象者の中には、脳血管障がいの後遺症や認知機能障がい、口腔や気管の障がい、手術などが原因で、食べ物を噛んで飲み込む動作がうまくできない「咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)障がい」の患者さんもいます。そのため臨床栄養学では、栄養素の働きや消化・吸収・代謝などの知識に加え、障がいの程度に応じて食形態を調整する技術も学びます。
おいしく食べることで生きる気力が湧く
私たちは、おいしいものを食べると、力が湧いてくるような気分になります。食事は、単に栄養を補給するだけではなく、生きる気力や喜びを生み出すものでもあります。
昔の病院食は、咀嚼・嚥下障がいの患者さんに対して見た目のよくないものもありました。しかし、臨床栄養学や調理学、食品学の進歩によって、加圧調理法や冷凍調理法、たんぱく質分解酵素などを駆使した、見かけも味もよく、栄養バランスも整っていて、噛まなくても飲み込める「嚥下調整食」の開発が進んでいます。食事を楽しみながら栄養を摂取できる嚥下調整食は、医薬品のような即効性はないものの、確実かつ着実に入院患者さんの回復力を高める治療補助の1つなのです。
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先生情報 / 大学情報
広島修道大学 健康科学部 健康栄養学科 教授 栢下 淳子 先生
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