悩みながら切り開く 一人ひとりに最適な栄養ケア
管理栄養士を取り巻く環境の変化
日本では2000年に栄養士法が改正され、2002年には管理栄養士の養成課程も変化しました。新たに重視されるようになったのが、「人間栄養学」です。例えば、皮膚や舌の症状、体重や筋肉量などの身体症状、血液検査結果などをみて、個別の栄養状態を評価します。このように臨床現場で、一人ひとりに最適な栄養ケアを提供する手順を考える分野が「栄養ケア・マネジメント」です。
患者によって異なる最適な栄養ケア
入院患者には、病気のために痩せている人が多くいます。痩せている患者が、さらに痩せてしまわないようにすることも、治療上、とても大事なことです。そのために、管理栄養士は、患者一人ひとりに、どんな食事を、どれくらいの量、摂るべきか考えます。食欲のない患者や、うまく飲み込めない患者に、どうしたら必要な栄養量を摂ることができるか考えます。「食べることは、生きること」なので、管理栄養士の役割は大きいです。
しかし、栄養を摂ることが、患者にとって必ずしも最適ではないこともあります。例えば余命が短い終末期の患者は、食べる量は少しでも良くて、安楽に過ごせるように管理栄養士は関わります。一方で、精神疾患の患者や重病の患者のように、本人の希望や意思を推し測るのが難しい場合や、病状や栄養の問題が複雑な場合、管理栄養士も悩みながら、その人に最適な栄養ケアを担っています。
管理栄養士の専門性は、臨床倫理でさらに高まる
管理栄養士には、さまざまな患者に最適な栄養ケアをしようとするために、抱く迷いや悩みがあります。これを解決するには、臨床倫理の知識・スキルが必要になると考えられています。
このことから、臨床倫理の学習プログラムを構築するために、臨床栄養のトップリーダーでさえも悩んだ、栄養ケアのストーリーを集めるインタビュー調査が進められています。この研究によって、栄養ケアは、患者にとってさらに最適なものになるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科 教授 五味 郁子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
栄養学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?